A Nickel-Catalyzed Carbonyl-Heck Reaction
Angew. Chem., Int. Ed. 2017, ASAP.
Jaya Kishore Vandavasi, XiYe Hua, Hamdi Ben Halima, Stephen G. Newma
反応開発の論文を見ていると、できないと思っていた反応が突然出てくる事がある。
今回紹介するのはまさにそんな反応!
アルデヒド溝呂木-ヘック反応
なんとアルデヒドの根本の炭素水素結合がアリール基になるらしい!
反応は以下のようにシンプルで、ニッケル触媒存在下、ベンズアルデヒド類とアリールトリフラートが反応するというシンプルなもの。
図1. アルデヒドで溝呂木ヘック反応
もともと溝呂木-ヘック反応はノーベル賞にも輝いたパラジウム触媒による炭素炭素二重結合(オレフィン)とアリールハライドの反応。
入手容易な原料を選択的にくっつける事ができる非常に有用性の高い反応。
もしこれを炭素-酸素二重結合(カルボニル)でもできたら、ケトンのいい合成方法になるのではないか、、、?
誰でも一回くらい思った事があるだろう。でも無理だと思うよね、誰でも思いつくのにまだないのだから。
ちょっと前、マクミランらが形式的に似ている反応を報告している。金属触媒、可視光光触媒、水素引き抜きを利用した、マクミランらしい相当凝った反応である(参考文献1)。
図2. マクミランによる三触媒共働アルデヒド官能基化
ん~芸術的!
なるほど~こうすればアルデヒドの根元に炭素官能基導入できるのか~さすがマック!すごいぜ!なんて思っていたが、本論文の著者らはこの問題に真っ向勝負。
使うのは触媒と配位子、塩基、熱だけだ!
(^_^;)あの~、、、勝算あるんですか??
著者らは で触媒や配位子、塩基を驚異的にスクリーニング。
Supporting information は必見!(freeで見られるよ!)
(^o^;)条件めっちゃふるやん。。。
その結果、見事今回の反応を発見するに至った。
(°_°)、、、まじ?いけるんや、、、
m(_ _)m 私が間違っておりました!
基質範囲は是非論文を見て欲しいが収率よく、幅広い適用範囲でいい感じ。
いやはや、すごいですね。
こういう固定観念みたいなものを破壊する反応が報告されると嬉しくなりますよね。
あと著者らも主張しているのだけど、ニッケルと今回のトリホスフィン配位子、塩基のTMPの組み合わせは特異的かつあんまり見ない組み合わせ。
この系を用いて他にも無理だと思ってた反応が可能になるかも!
そのためにもなぜ今回の組み合わせが優れていたか深いメカニズム考察が欲しいなー
続報に期待!
参考文献
(1) Xiaheng Zhang and David W. C. MacMillan, J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 11353.
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