溝呂木-ヘック反応 / Mizoroki-Heck reaction

有名反応・試薬・概念

溝呂木-ヘック反応 / Mizoroki-Heck reaction

 

金属触媒を用いた炭素-炭素結合形成反応のにおける超重要反応の溝呂木-ヘック反応。
あまりに有用な反応で、2010年にRichard Fred Heck先生はノーベル賞を受賞した。なお残念ながら溝呂木先生は若くして逝去されたため受賞していない。。。

 

反応概要

有機ハライドとオレフィンがパラジウム存在下くっつく。


図1. 溝呂木-ヘック反応の典型例

 

反応機構

1. アリールハライドがパラジウム(0)に酸化的付加し、アリールパラジウム種が生成する。
2. アリールパラジウム種がオレフィンと相互作用し、syn付加する。
3. 発生した中間体は回転を伴いsynβ脱離を伴い目的生成物とパラジウム(II)ヒドリドを与える。
4. このパラジウムヒドリド種は塩基によって還元され、パラジウム(0)が再生する。


図2. 溝呂木ヘック反応の反応機構

この反応の利点

1.  原料の入手が容易

アリールハライドとオレフィンのいずれの原料も調製が容易な上、市販薬が多く手に入りやすい。入手容易な試薬から、有機合成化学で最も大事な結合である炭素-炭素結合を伸ばせるのは素晴らしい。

2. 触媒がないと反応しない

結構私見だが、ヘック反応は分子内反応で極めて効果的に用いられている事が多い
察するに、これは原料のいずれも触媒がない状態では安定であるため、ヘック反応する部分(有機ハロゲン部位と二重結合部位)を組み込んだ分子を合成しやすいからであろう
この特徴を活かして、分子内ヘックは複雑化合物の精密合成で力を発揮する。(例えば参考文献1)


図3. 分子内溝呂木ヘック反応の応用例(参考文献1)

3. 共役の広がった生成物を得る事ができる

図1のようにヨードベンゼンとスチレンを反応させるとスチルベンが得られる。
つまり共役が広がった生成物が得られるという事だ。
共役の広がった化合物を簡単に得る事ができる溝呂木-ヘック反応は天然物や医薬の合成だけでなく、マテリアルサイエンスにおいても重要な役割を果たしている。

主な利点はこんなところだろうか。

歴史的には溝呂木先生の報告が先らしい。しかし溝呂木先生はbull chem Japan誌へ投稿、 ヘック先生がJACS誌に投稿ということで世界的には(日本でも)ヘック反応で名前が通っている。

こういうのを聞くとなんか悔しいですよね(´-`)

とはいえこの反応が素晴らしいことに変わりはない。
最近でもこの反応の変形は多く報告されており、金属触媒反応開発する上で欠かす事のできない反応です

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参考文献
(1) V. H. Rawal, C. Michoud, R. F. Monestel, J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 3030.

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