BJOC誌:非選択的な反応がいいこともある! カエルから採れる天然マクロライド合成とGC-MS分析の話

   

Identification, synthesis and mass spectrometry of a macrolide from the African reed frog Hyperolius cinnamomeoventris

Beilstein J. Org. Chem. 2016, 12, 2731.
Markus Menke, Pardha Saradhi Peram, Iris Starnberger, Walter Hödl,
Gregory F.M. Jongsma, David C. Blackburn, Mark-Oliver Rödel, Miguel Vences and Stefan Schulz*

非選択的なことがいい!?

有機合成の研究者は、「いかに反応を選択的にするか」にすごく頭を使う。
思うように選択的な反応ができれば、収率が上がり、立体が決まり、eeがあがるからである。

逆に選択的でないことは基本的にネガティブに思われるし、実際多くの場合そうなんだけど、たまにはいいことがあるらしい!!

今回は最近私がゴリ押ししているBeilstein JOCから、カエルから採れる天然マクロライド合成およびGC-MS分析についての論文を紹介したい。

カエルから採れる天然マクロライド

今回の論文はイントロから面白い。

カエルは一般的「ゲコゲコ」といった音で求愛してパートナーを見つけると思われている。
ただ、いくつかの種は化学物質を発して求愛する。
例えばアフリカのカエルであるHyperoliidaeは求愛中に揮発物質を分泌する種である。

そうなんだ鳴き声だけでないのね(゜o゜)!!

分泌物をGC-MS分析すると1もしくは2のようなマクロライドが未知物質の候補として挙がった。


図1. カエルの分泌物のマクロライドの候補化合物(論文より抜粋)

全合成で確認

全合成はマクロライド合成でお決まりのメタセシス反応。
オレフィンを二つ持つ基質17にZ選択的メタセシス触媒12を作用させると、Z選択的に環化が進行し、マクロライド1が得られた。(参考文献1)
マクロライド2合成も同様で、Z選択的メタセシス触媒12を用いると、Z選択的に環化が進行した。
一方Hoveyda-Grubbs第二世代触媒11を用いると、オレフィンが異性化しするので環が小さい化合物やオレフィンの位置が変わった化合物の混合物が得られた。



図2. メタセシス反応によるマクロライド1および2の合成(論文より抜粋)

メタセシス反応爆発!って感じね(^O^)
相も変わらず有用ね!

どっちが天然物か?

で、天然物(下図上段)と1(中段)2(下段)のGC-MSを比較したところ1が天然物と一致。
キラルガスクロマトグラフィーで天然物はS体であることも分かった。

図3. 天然物、合成物1および2のMSスペクトル(論文より引用)

ここで終わったら、まぁそっかーって感じだけどここからの議論が面白い。

 

GC-MSライブラリの構築

著者はGC-MSにおける
1140, 126
2182
のフラグメントに注目。
このフラグメントはイオン化したオレフィンのラジカルから発生したものとすると観測された質量と一致することが分かった。

図4. フラグメントの推定(論文より抜粋)

つまりフラグメントによってオレフィンの位置が推察できることになる!!

これは未知の不飽和マクロライドのオレフィンの位置を特定する有力な知見になるだろう。
さらに、様々な環の大きさとオレフィンの位置である不飽和マクロライドの情報をGC-MSのライブラリを構築できれば、類縁体の同定に便利だろう。
しかし、ライブラリを構築するほどいろいろ合成するのは明らかに手間だ、、、

だがちょっと待てよ、、、合成のところで、、、

“Hoveyda-Grubbs第二世代触媒11を用いると、オレフィンが異性化しするので環が小さい化合物やオレフィンの位置がわった化合物の混合物が得られた。”

いろんな類縁体の混ざりものがすでにある!!
つまりライブラリが手元にもうある!!
GC-MSなら単離する必要もないしね。
実際、混合物を分析することで10種類のマクロライド化合物のMSスペクトルが得られた。

鎖状の不飽和炭化水素は位置異性体をMSで判断することは難しいらしいが、環状マクロライドはある程度うまくいくようだ。
今後天然から新たなマクロライドが単離されたときに、化合物同定の重要な情報になるだろう。

反応はきちんと行くほどいいものだが、そうでないこともあるという珍しい例。

今回メタセシス反応は非選択的になっても有用なんですか・・・(^_^;)

メタセシスどんだけ有用なんだよ!!

 

参考文献
1) Marx, V. M.; Herbert, M. B.; Keitz, B. K.; Grubbs, R. H. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 94.

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