アルデヒドで鈴木宮浦カップリング
Nickel-catalyzed Suzuki–Miyaura cross-couplings of aldehydes
Nature Communications 10, Article number: 1957 (2019)
Lin Guo, Watchara Srimontree, Chen Zhu, Bholanath Maity, Xiangqian Liu, Luigi Cavallo & Magnus Rueping
鈴木-宮浦カップリングの新しい相方
神反応と名高い鈴木-宮浦カップリングの優秀さは、この反応の紹介記事で書いたのでそちらに譲ろう。(記事はこちら:鈴木-宮浦カップリング / Suzuki-Miyaura coupling)
鈴木-宮浦カップリングは一般的に有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物の金属触媒によるカップリングである。最近は、有機ハロゲン化物の代わりに他の官能基をもった化合物を、有機ホウ素化合物と反応させる、新しい鈴木-宮浦カップリングが報告されている。
気になる今回の反応相手はなんと「アルデヒド」
ニッケル触媒によるアルデヒド類と、ボロン酸誘導体のカップリング反応が報告された。
反応系は、ベンズアルデヒド類とアリールボロン酸エステルを、ニッケル触媒、配位子、水素アクセプターのケトンを160 ℃に加熱するというもの。
図1. アルデヒドで鈴木宮浦カップリング反応
ずいぶんシンプルに見えるが、水素アクセプターを加えていることがこの反応のポイントのようだ。アルデヒドがニッケルに酸化的付加した後、ヒドリドを奪う役割があるようだ。また、反応条件で気になることが一つ。
塩基がない!!
実はこれ、水素アクセプターが水素を奪った際、塩基として働くという原理。
なるほど、言われてみればH–を受け取ったケトンはO–なりそうだもんね。(^O^)/
つまり水素アクセプターは、ヒドリドを奪う役割と、塩基の役割を果たしているということになる。
所感
シンプルな新しい鈴木-宮浦カップリング。
アルデヒドが脱離基みたいになって面白いね。そういえば、オレフィンの代わりにアルデヒドで溝呂木ヘック反応する反応とかも前に紹介したな。(アルデヒドで溝呂木・ヘック反応できる!?)
アルデヒドは金属触媒(特にニッケル??)と相性がいいのかな。前からあってもよさそうな反応が、最近でもちょいちょい報告されている。今後も、いろんな反応に展開されるんだろうか。
あと、この手の反応で気になるのは配位子の特異性。今回はP(Oct)3が一番良かったみたいだけど、なんでこうも配位子で変わるんでしょうね(^_^;)。。。 私のような門外漢からすると謎すぎる。
自分も金属触媒の反応開発やってみたいけど、この辺の感覚のなさが参入できない要因と感じている。
まぁ、論文読んで、勉強して、たま~に反応仕込んでみようかな。(´ー`)
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コメント
切れにくい置換基を切るにはやっぱりNiですね
でもやっぱりPdで行くようにならないとなかなか実用的にはならないだろうなあって感じがします
Niは安定性低いからグロボ使わないと厳しいです
Niは堅そうな結合最近スパスパ切ってびっくりですよね。
安定性ってやっぱり結構問題なんですかね?(私はあんまり知らなくて。。。)Niがどれくらい現場で使われているかも気になるところです。