ボロン酸”で”ジオール”を”保護
2,6-Bis(trifluoromethyl)phenylboronic Esters as Protective Groups for Diols: A Protection/Deprotection Protocol for Use under Mild Conditions
Org. Lett. ASAP, DOI: 10.1021/acs.orglett.8b02427
Naoyuki Shimada, Sari Urata, Kenji Fukuhara, Takao Tsuneda, and Kazuishi Makino
保護基はたくさんあるけれど
保護基は有機合成における強力な武器である事は間違いない。
反応したくない部分に保護基をつけて、後から外す。
むしろ保護基を使わずにどうやっていろんな官能基を持った化合物を合成すればいいのかわからない。
近年はいかに保護基使わず全合成するかが競われているけれど、保護基がいかに便利かの裏返しだろう。
保護基を新たに開発する
ただこの21世紀において保護基の開発は容易でない。
一番難しいのが過去の保護基と比較して優位性を確保することだ。
過去の偉大な化学者の知見の蓄積が凄すぎるのだ。
保護基の辞書こと、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesisを読むと、保護基は星の数ほどあることがわかって、もう新しい保護基はいらないのでは?なんて思えてくる。
そんな中Organic Letters誌に報告されたのが今回紹介する論文で、北里大学の牧野先生と嶋田先生らの報告。
なんでもボロン酸でジオールを保護するとのこと!
普通はボロン酸をピナコールなどのジオールで保護するが、、、なんたる逆転の発想。
なんといっても気になるのは新しい保護基の有用性。論文を見てみよう!
論文の内容
保護
今回開発したボロン酸保護基はトリフルオロメチル基をオルト位に2つ有するボロン酸o-FXylB(OH)2
ジオールとまぜて温めるだけで簡単にジオールを保護することができる。
図1. ジオールの保護方法(論文より引用)
反応耐性
o-FXylB(OH)2で保護したジオールはちゃんといろいろな反応条件に耐えられるのだろうか?
ボロン酸エステルなんてぽろぽろ取れそうなイメージがあるが、、、
もちろん検討していてかなり丈夫であることがわかる!
図2. 開発した保護基の反応耐性(論文より引用)
酸化・還元・Grignard試薬・wittig反応・メタセシス・カップリング反応・酸・塩基、どんな反応条件でも保護したジオールはそのまま。
すげぇーー!(゜o゜)
オルト位のトリフルオロメチル基が相当効いているね。
脱保護
ここまで反応しないと脱保護できないのでは?と思うが、心配無用。
より強力な複合体を形成するであろう、アミン16を加えるとほぼ中性条件で脱保護できる。
図3. 保護基の脱保護(論文より引用)
まじか!すげぇーーぇーー!(゜o゜)!!
所感
新しい保護基でここまで有用そうなものを開発できるのは驚愕の一言。
しかも複雑怪奇な基質を用いているわけでなくシンプルな仕掛けで今回の選択性を持った保護基を実現。
すごい。
あと是非元の論文見てほしいけど、いろいろ丁寧にデータとって、アプリケーションまでやり遂げているところも非常に参考になる。
有機合成の論文はこうでないとあかんなぁ、と思った次第。
あと先日Birch還元に関する論文を取り上げてOrg. Lett. of the year だと評しましたが、若干早計だったかもしれません。
この論文と甲乙つけるのは私には無理だ・・・!
まぁ、Birch還元にせよ今回のo-FXylB(OH)2にせよ”みんなに使われるメソッド”になるだろうから、どちらも素晴らしいでいいんだろう。
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