オレフィンメタセシス反応 / Olefin Metathesis

   

オレフィンメタセシス反応 / Olefin Metathesis

 

ひとつの反応が世界を変える。

メタセシス反応は従来ではあり得ない合成ルートを可能にした。

それにより逆合成戦略は一変した。

メタセシス反応は2つのオレフィンを組み替える反応で、モリブデンやタングステンを触媒とした反応が初期に見出された。
しかしながら、当初そこまで上手く合成に利用されているわけではなかった。
これらの触媒はいろいろなものに反応するので、多様な官能基を持つ化合物に適用できなかったのである。

1992年にグラブスが水や空気に安定なメタセシス触媒を報告(参考文献1)。ハンドリングが良いだけでなく、多様な官能基を持った化合物のオレフィンだけ反応させることができるようになった。

これは本当に革命的で、2005年にオレフィンメタセシスの開発に対しイヴ・ショーヴァン、リチャード・シュロック、ロバート・グラブスはノーベル賞が与えられている。

 

反応概要

オレフィン2つが組み替わるよというもの。
触媒はグラブス第一世代と第二世代が有名か。


図1. オレフィンメタセシス反応とグラブス触媒

 

反応機構

あまり類を見ない独特の反応。

・金属カルベノイド錯体かオレフィンと反応し、四員環を形成。
・この四員環から再びオレフィンと金属カルベノイド錯体が生成。
・これを繰り返しオレフィンが組み変わる。
・この時原料に戻るか、生成物を与えるかは平衡反応で、エネルギー的に安定な方へ落ち着く。


図2. オレフィンメタセシスの反応機構

 

この反応の利点

・オレフィンが選択的に反応し、炭素-炭素結合ができる。

入手容易な2つのオレフィンがくっつく。単純な原料から複雑なオレフィンが得られるので合成的価値が非常に高い。
分子間反応の場合でも基質によっては選択的にクロスメタセシス生成物が得られる。


図3. クロスメタセシスの例

選択的にクロスメタセシスを行うためのガイドラインの論文もあるので、分子間クロスメタセシスをする人は要チェック!(参考文献2)


・大環状化合物を容易に合成できる

大環状化合物の合成というとメタセシス反応開発前はマクロラクトン化くらいがメジャーな方法であるのみであった。
一方閉環メタセシスは炭素-炭素結合形成を伴って大環状化合物が合成できる。
この反応で合成戦略は一変してしまった。

図4に示すような大環状化合物の合成考えると有用性がわかりやすい。
(A)は古典的なマクロラクトン化での合成を示している。ヒドロキシカルボン酸を縮合させて化合物を得る。

原料の合成はアルコールやカルボン酸など反応しやすい官能基を持たせつつ、長い炭素炭素結合を構築しなければならない。
なかなかめんどくさそうだ

一方(B)がメタセシス反応に基づく戦略

最初にエステル作ってあとからガシャン!

ね?簡単でしょう?


図4. 大環状化合物の合成。(A) マクロラクトン化による合成, (B) オレフィンメタセシスを用いた合成

 

・炭素炭素を繋げるだけでなく切ることもできる。

メタセシス反応は可逆反応なので今までと逆に狙った二重結合を切ることもできる。

この時は歪みエネルギーを持った基質に適用される事が多い。
歪みエネルギーの解消を駆動力に、炭素炭素結合が切れるように反応が進んでくれる。


図5. 開環メタセシス反応

おそろしいよね。炭素-炭素二重結合が平衡で形成したり開裂したり。
炭素炭素結合は硬いというイメージが崩れる(^_^;)

 

・ポリマーを簡単に合成できる

合成化学だけでなく材料科学的にもメタセシス反応は重要だ。

先ほどの歪みエネルギーの解消を駆動力とした開環メタセシスだが、別の反応相手を入れない場合、自分自身と新たな炭素炭素二重結合を作り、ポリマーが生成する。


図6. 開環メタセシス重合

工業的にも応用されているらしい。
しゅごい、、!

 

・官能基許容がすごい

こんなあり得ない反分子変換ができちゃうメタセシス反応。
グラブス触媒を用いるとなんとアルコールやアミンなど他の官能基があっても全然大丈夫。

なぜ二重結合だけ反応するんだ、、、(^_^;)

今までの特徴を活かしたのがWoodらの ingenolの合成。(参考文献3)


図7. 参考文献3:メタセシス反応を利用したingenolの合成(図は参考文献4より引用)

まず開環メタセシス、その後別の場所で閉環メタセシスあっさり縮合した中員環が構築。アセタールやケトンがあっても全然問題なし。

なんなんこれ?(^_^;)
ちょっとメタセシス有用すぎるわ~

こんな感じで有機合成、材料科学を変えたメタセシス反応。
今も絶賛進化中で、しばしばトップジャーナルで見かける。
Z選択的メタセシスとかすごすぎるよね(^_^;) (参考文献5)

有機化学にこれ以上の発見は残っているのだろうか、、、

 

参考文献
(1) Nguyen, S. T.; Johnson, L. K.; Grubbs, R. H.; Ziller, J. W. J. Am. Chem. Soc. 1992114, 3974. 
(2) Arnab K. Chatterjee,Tae-Lim Choi,Daniel P. Sanders, andRobert H. Grubbs, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11360.
(3) Andrew Nickel,Toru Maruyama,Haifeng Tang,Prescott D. Murphy,Blake Greene,Naeem Yusuff, andJohn L. Wood, J. Am. Chem. Soc. 2004126, 16300.
(4) K. C. Nicolaou, Paul G. Bulger, and David Sarlah,  Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4490.
(5) Koh, M. J.; Khan, R. K. M.; Torker, S.; Yu, M.; Mikus, M. S.; Hoveyda, A. H. Nature 2015517, 181.

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