ウィッティヒ反応 / wittig reaction
炭素炭素二重結合(オレフィン)はそれ自身が重要であるだけでなく、合成中間体としても超重要である。
一方で、二重結合をきちんと作る方法ってのは思ったより少ない、それゆえ二重結合の良い合成法は非常に貴重かつ重要だ。
その中で抜群の実績と信頼を誇るのがウィッティヒ反応。
ノーベル賞反応といわれるとどれだけ重要かよくわかるだろう。
どういった反応かというと、ホスホニウムから発生したリンイリドとカルボニル化合物(ケトンやアルデヒド)が塩基存在下、炭素炭素二重結合が生成するという反応で、なんだかややこしい。
初見ではリンとか出てきて大げさな感じがするよね(^_^;)
図1. 反応スキーム
反応機構もぱっと見、ややこしい。
・ホスホニウムのαプロトンは酸性度が上がっており、塩基で引き抜くことができる。
・ホスホニウムから発生したリンイリドがカルボニルに対し求核付加し、四員環中間体を形成する。
・この四員環は、安定なリン酸素二重結合の形成を駆動力に炭素炭素二重結合(オレフィン)とホスフィンオキシドを生成する。
図2. 四員環中間体を経る反応機構
他にもいろいろややこしい要素があって
・E/Zはリンイリドの安定性によって異なる。
・生成物と等量のホスフィンオキシドが生成する。
など、なかなか複雑だ。
この辺の詳しくはwikipediaとかを見てもらうとして、ここではややこしいウィッティヒ反応のどこがすばらしいか考えてみたい。
ウィッティヒ反応のすばらしい点
・原料の入手が容易
ホスホニウムはアルキルハライドとトリフェニルホスフィンから容易に合成可能。
またカルボニル化合物は多くの市販薬があり、入手が容易。
よって炭素炭素二重結合を入手容易なものから合成できる。
・二つのフラグメントをつなげつつ、二重結合を確実に合成できる。
有機合成は基本的に小さな分子から大きな分子を合成することが目的である。
このウィッティヒ反応は二つのフラグメントをくっつけることができるので、その目的と見事に一致している。
しかも生成物の炭素炭素二重結合を足掛かりにさらに分子を大きくすることができる。
以上の二点が有機合成のなかでウィッティヒ反応の重要性を高めていると思われる。
E/Zの分離が大変だったり、ホスフィンオキシドの単離が大変だったり、実際にやってみると結構大変。
ただ、不可能というより、乗り越えられそうなちょうどいいレベルの困難さなんだよね。
こういった点もウィッティヒ反応が化学者の心に残り、愛される理由かもしれませんね。(^ ^;)
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