鈴木-宮浦カップリング / Suzuki-Miyaura coupling

      2018/02/04

鈴木-宮浦カップリング / Suzuki-Miyaura coupling

有機反応総選挙を行えば、

間違いなくトップ3に入るであろう、鈴木-宮浦カップリング。

余りの有用性が評価され、2010年に鈴木章先生はノーベル賞を受賞。

怪物ぞろいのカップリング反応の中でも鈴木-宮浦カップリングは神がかった反応と名高い。
一体なにがそんなにすごいのだろうか?

 

反応概要

有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物がパラジウムなどの金属触媒と塩基存在下くっつくというもの


図1. 鈴木-宮浦カップリングの典型例

反応機構

1. 有機ハロゲン化物がパラジウム(0)に酸化的付加し、有機パラジウム(II)が生成する。
2. 一方で有機ホウ素化合物が塩基によって活性化され、ボレートが生成する。
3. ボレートが有機パラジウム種とトランスメタル化する。
4. 還元的脱離を伴い目的カップリング生成物が得られる。この時同時にパラジウム(0)が再生する。


図2. 反応機構、ボレートがトランスメタル化する。

 

この反応の利点

1. 有機ホウ素化合物は水や空気に安定

グリニャール試薬や有機リチウム種、有機亜鉛化合物は反応性高く、水や空気が容器に入っていると、それらと反応して失活してきまう。
一方、有機ホウ素化合物は一般的に水や空気と反応しない。

実験の失敗も少なくなる。
ケアが少なくていいのは工業的にも嬉しい

2. 試薬がたくさん売ってる

ホウ素化合物が安定なのは試薬会社にとっても嬉しい事で、今ではたくさんの種類の有機ホウ素化合物が市販されている。
冷蔵試薬で溶液販売のグリニャール試薬と、固体で室温保存できるホウ素化合物。
圧倒的に有機ホウ素化合物の方が売りやすい。
実験者にとっては使いやすい。

3. 驚異の官能基許容性

例えば、こんな熊田・玉尾・コリューカップリングは可能だろうか?


図3. 不可能な熊田・玉尾・コリューカップリング。

実際には難しいだろう。

まずケトンを持ったグリニャール試薬を用意する事ができない。発生させた瞬間他分子のケトンと反応してしまうだろう。(図4. A)
また仮にケトンを有するグリニャール試薬を調製できても、目的のカップリング反応の前にブロモベンズアルデヒドのアルデヒド部位に求核付加してしまうだろう。(図4. B)


図4. 求電子性官能基を持つ基質での熊田・玉尾・コリューカップリングがうまくいかない理由

すなわち熊田・玉尾・コリューカップリングはケトンやアルデヒドの官能基許容性がないという事だ。

しかし、鈴木-宮浦カップリングに用いる有機ホウ素化合物は反応性が非常に低く、ほとんどの官能基と反応しない。

なのでさっきの反応についても、アリールボロン酸はケトンやアルデヒドと反応しないので、鈴木宮浦カップリングなら楽勝でカップリング生成物を得られる!


図5. 鈴木カップリングなら官能基を持った基質でもちゃんとカップリングできる。

つまり、鈴木-宮浦カップリングはケトンやアルデヒド官能基許容性があるという事になる。
他にもエステル、シアノ、ニトロなどなど多くの官能基を傷つけることなく、狙ったところで反応させることができる。

この官能基許容性は分子が大きくなればなるほど、官能基を持てば持つほど非常に大事になってくる。
その点、鈴木-宮浦カップリングは官能基許容性が抜群なので、医薬や天然物の合成に広く用いられている。

4. 生化学にも!

前述の通り、有機ホウ素化合物は水にも安定で、鈴木-宮浦カップリングは水中で行われてもまったく問題ない。
しかもホウ素由来の副生成物は毒性が低い。
この特徴を活かし、鈴木-宮浦カップリングは生化学にもしばしば応用される。

 

鈴木・宮浦カップリング所感

この反応は本当に有用。
学生時代にもその威力を嫌という程思い知らされました。(^_^😉

反応性が低いはずの有機ホウ素化合物が、触媒があると極めて効率よく反応する。
この二律背反の両立はもはや、理不尽さを感じるレベルだ。

まさに神が人間に与えたとしか思えない反応、鈴木・宮浦カップリング。

ただそれを開発し、進歩させてきたのは人間なわけで、そう思うと人類の叡智はすごいなと感嘆せずにはいられない。

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