炭素の隣の元素、ホウ素と窒素の性質を抑えよう!
勇樹 | 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち |
理香 |
そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。 |
周期表の隣は別世界
有機化学は炭素の化学であることは、初めに話したが、炭素だけの化学だけではない。
むしろ他の元素こそが、有機化学に彩りを与えてくれる。
例えば周期表において、炭素の隣のホウ素と窒素は、炭素と性質が大きく異なる。
図1. ホウ素と炭素と窒素
そんなに違うんですか?? 確か、ホウ素も窒素も手が三本になるのは知ってますけど。 |
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勇樹 | 手の数だけが違いではないんだ・・・!
周期表の隣はまさに別世界。反応性から構造までちがってくる!これは非常に大事なので絶対抑えよう!! |
ルイス構造式
まず、ホウ素原子、炭素原子、窒素原子のそれぞれのルイス構造式を書いてみよう。
それぞれ最外殻電子が3個、4個、5個になることがわかる。
図2. ホウ素・炭素・窒素のルイス構ホウ素・炭素・窒素のルイス構造式
これがそれぞれ水素と結合し、BH3, CH4, NH3になるとどうなるか考えよう。(注:実際のBH3は二量化して、単量体は存在できないが、ここでは単量体を考える。)
できました!
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勇樹 |
素晴らしい! ならばこのルイス構造式から、実際にこれらがどんな立体構造を持つか考えよう。 |
イミフ!
そんなんわかるわけないじゃないですか!! |
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勇樹 |
確かにわかるわけないように思えるかもしれない。 しかし、実は「電子と電子は反発しあう。」というルールでそれぞれの分子構造を予測することができる。 |
メタンの場合
勇樹 |
メタンはC-H結合として四組の共有電子対を持っている。 この共有電子対がお互いに反発して、できるだけ遠ざかろうとする。するとなんとなく四面体構造が一番お互い離れていることがわかるだろう。 |
確かに・・・ここから動かすと、どれかが近づいちゃいそうです。 |
窒素の場合
勇樹 |
アンモニアはN-H結合として三組の共有電子対と一つの非共有電子対を持っている。 これらの電子対が反発してお互い遠ざかろうとすると、本質的な構造はほとんどメタンと変わらないことになる。 |
なるほど~ 一つが非共有電子対だから、四面体構造の一つの頂点が欠けたような三角錐型の構造になるんですね! |
ホウ素の場合
勇樹 |
ボランはB-H結合として三組の共有電子対と空の軌道を持っている。 炭素や窒素の場合と異なり電子対は三組だけ。なのでお互い最も遠ざかろうとすると、平面構造になる。ちなみに空の軌道は、その面に対して垂直にひろがっている。 |
確かにホウ素はメタンやアンモニアと違って、電子対が三組しかないですね。 だから、ホウ素と窒素が同じ手が三本でも構造が変わってくるんですねぇ~ |
構造から予測される反応性
この構造からメタン・窒素化合物・ホウ素化合物の反応性が説明できる。
メタンは電子対がすべて結合に使われており、空の軌道も非共有電子対もない。つまり反応する隙がまったくないため、極めて反応性が低い。
一方、窒素化合物は非共有電子対が張り出しているため、塩基としてはたらいたり、求核攻撃できたりする。
またホウ素化合物は空の軌道があるため、塩基を受け入れボレートになることができる。つまりルイス酸として働く。ボレートはメタンやアンモニアと同様に電子対が四組になるため、四面体構造になる。
炭素は反応しなくて、ホウ素は酸で、窒素は塩基になるんですね。。。
周期表の隣はまったく別なんですねぇ~ |
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勇樹 |
だからこそ、炭素以外の元素は炭素にない特徴や反応性を有機物に与えてくれるわけだ! よし、今度は柔らかい・硬いでもやろうか! |
へ?何の話?? |
次回に続く
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イラスト
矢野恵様に書いていただきました!
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