鈴木-宮浦カップリング / Suzuki-Miyaura coupling
有機反応総選挙を行えば、
間違いなくトップ3に入るであろう、
余りの有用性が評価され、2010年に鈴木章先生はノーベル賞を受賞。
怪物ぞろいのカップリング反応の中でも鈴木-宮浦カップリングは神がかった反応と名高い。
一体なにがそんなにすごいのだろうか?
反応概要
有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物がパラジウムなどの金属触媒と塩基存在下くっ
図1. 鈴木-宮浦カップリングの典型例
反応機構
1. 有機ハロゲン化物がパラジウム(0)に酸化的付加し、
2. 一方で有機ホウ素化合物が塩基によって活性化され、
3. ボレートが有機パラジウム種とトランスメタル化する。
4. 還元的脱離を伴い目的カップリング生成物が得られる。
図2. 反応機構、ボレートがトランスメタル化する。
この反応の利点
1. 有機ホウ素化合物は水や空気に安定
グリニャール試薬や有機リチウム種、
一方、有機ホウ素化合物は一般的に水や空気と反応しない。
実験の失敗も少なくなる。
ケアが少なくていいのは工業的にも嬉しい。
2. 試薬がたくさん売ってる
ホウ素化合物が安定なのは試薬会社にとっても嬉しい事で、
冷蔵試薬で溶液販売のグリニャール試薬と、
圧倒的に有機ホウ素化合物の方が売りやすい。
実験者にとっては使いやすい。
3. 驚異の官能基許容性
例えば、こんな熊田・玉尾・コリューカップリングは可能だろうか?
図3. 不可能な熊田・玉尾・コリューカップリング。
実際には難しいだろう。
まずケトンを持ったグリニャール試薬を用意する事ができない。
また仮にケトンを有するグリニャール試薬を調製できても、
図4. 求電子性官能基を持つ基質での熊田・玉尾・コリューカップリングがうまくいかない理由
すなわち熊田・玉尾・コリューカップリングはケトンやアルデヒドの官
しかし、
なのでさっきの反応についても、アリール
図5. 鈴木カップリングなら官能基を持った基質でもちゃんとカップリングできる。
つまり、
他にもエステル、シアノ、
この官能基許容性は分子が大きくなればなるほど、
その点、鈴木-宮浦カップリングは官能基許容性が抜群なので、
4. 生化学にも!
前述の通り、有機ホウ素化合物は水にも安定で、
しかもホウ素由来の副生成物は毒性が低い。
この特徴を活かし、
鈴木・宮浦カップリング所感
この反応は本当に有用。
学生時代にもその威力を嫌という程思い知らされました。(^_^
反応性が低いはずの有機ホウ素化合物が、
この二律背反の両立はもはや、理不尽さを感じるレベルだ。
まさに神が人間に与えたとしか思えない反応、
ただそれを開発し、進歩させてきたのは人間なわけで、
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