有機化学のブログ:面白い最新論文解説したり、有名反応をまとめたり、入門向け記事書いたり。

女子高生と学ぶ!アルドール反応の超基本:アルデヒドとエノラートの炭素-炭素結合形成

2019/03/03
 
この記事を書いている人 - WRITER -

女子高生と学ぶ有機化学まとめはこちら
前回はこちら

炭素-炭素結合形成反応の原点かつ頂点

勇樹 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち

理香
そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。

アルドール反応を学ぼう

勇樹 前回まででエノラートを説明した。
いろんなカルボニル化合物のα位のプロトンを塩基で引き抜くことで、炭素マイナス(求核剤)のエノラートになるんですよね。

勇樹 その通り!

つまり、カルボニル化合物の反応性は、大きく二つにわけることができる。

①酸素の電気陰性度が高いため、C=O結合の炭素が炭素プラス(求電子剤)になる
②塩基でα位の水素を引き抜くことで、エノラートが発生。α位が炭素マイナス(求核剤)になる。

あるときはプラスで、ある時はマイナスってのがややこしいですね・・・
勇樹 確かに慣れるまでややこしいかも。

でもプラスにもマイナスにもなれる性質を活かしたのが、炭素-炭素結合形成の王、アルドール反応だ。

 

アルドール反応の最も基本的な形

まず、もっとも単純なアセトンの塩基性条件でのアルドール反応を例に考える。

アセトンのC=Oの炭素は、酸素が電子を引っ張るためδ+になっている。一方、塩基が存在すると、アセトンの一部がエノラートに変換される。カルボニルのプラスとエノラートのマイナスがくっつくように付加反応し、炭素-炭素結合が形成される。


図1. アセトンのアルドール反応

ちなみに反応条件によっては脱水反応が起き、二重結合が形成される。これをアルドール縮合という。


図2. アセトンのアルドール縮合

また、酸性条件でも似たようなことが起きる。この場合はオキソニウムとエノールが反応することになる。


図3. 酸性条件でのアルドール反応

こんな単純な反応条件でくっつくんですね!
勇樹 ずいぶん簡単にくっつくよね。

さらに応用で、同一分子の二量化でなく、異なる分子をくっつけることができる。

 

クロスアルドール

ベンズアルデヒドとアセトフェノンの塩基性条件下でのアルドール反応を考える。

ベンズアルデヒドはα位にプロトンがないので、エノラートになることはできない。つまり炭素プラスとしての反応性しかない。
一方でアセトフェノンはα位にプロトンがあり、エノラートになることができる。つまり炭素プラスと炭素マイナスいずれの反応性も示す。


図4. ベンズアルデヒドとアセトフェノンはエノラートになれるのか?

アセトフェノンから発生したエノラートは、ベンズアルデヒドのC=OとアセトフェノンのC=Oのどちらとも反応する可能性がある。


図5. ベンズアルデヒドとアセトフェノン、エノラートはどちらと反応するか?

あれ?どっちと反応するんですか?
勇樹 結論から言うとベンズアルデヒドなんだ。

ここで重要なのはベンズアルデヒドのC=OとアセトフェノンのC=O”どちらがより炭素プラス性が高いか”ということ。

実はアルデヒドとケトンを比較した場合、アルデヒドのほうが求電子性に富んでおり、炭素プラス性が高い。

そうなんですか!?
勇樹 うむ。立体的要因と電子的要因で説明される。

 

アルデヒド ケトン
立体 カルボニルの炭素周りがすいている

比較的、反応性高い。

カルボニルの炭素周りが混んでいる。

比較的、反応性低い。

電子 水素はδ+を安定化しない

比較的、不安定で反応性が高い。

C-H結合が超共役でδ+を安定化する

比較的、安定で反応性が低い。

この2点の理由で、一般的にアルデヒドはケトンより求電子性が高い。

*あくまで相対的なもので、比較すればアルデヒドのほうが求電子性が高いことになるが、ケトンも十分に求電子性を持っていることに注意しておこう。

この反応性の差によって、ベンズアルデヒドとアセトフェノンを塩基性条件にさらすと、アセトフェノンから発生したエノラートがベンズアルデヒドと優先して反応することがわかるだろう。


図6. ベンズアルデヒドとアセトフェノンのクロスアルドール反応

こういうアルドールが異分子間で起こるものをクロスアルドールという。

 

ここがすごいよアルドール反応

まぁ、くっつくのはわかったんですけど、そんなにアルドール反応ってすごいんですか??
勇樹 めちゃくちゃすごいよ!!

反応式をみよ。気づくことはないか??

ん~・・・炭素-炭素結合ができてます・・・
勇樹 それは当たり前。

重要なのは、炭素-炭素結合ができるにもかかわらず、ゴミが出ないのだ!

な・・・!確かに!!
勇樹 グリニャールだったらマグネシウム塩が、アルキルハライドを使えばハロゲンのゴミが出る。

しかしアルドール反応はどこにでもあるカルボニル化合物を用いて、ゴミもなく分子を組み立てることができる。

勇樹 この特徴は工業的にも重要だ。

例えば、ベンズアルデヒドとオクタナールをアルドール縮合することでヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)が工業的に合成されている。副生成物はなんと脱水で生じる水だけ。

勇樹 HCAはシャンプーや化粧品など、だいたい何にでも入っている重要な香料の素材。

もちろんHCAだけでなく、身の回りのさまざまなモノがアルドール反応によって作られている。

めちゃくちゃ重要な反応であることがわかるだろう。

すごい・・・アルドール最強じゃないですか!!
勇樹 そう最強なんだよ!!まさに有機反応の王!!

あと、アルドール反応は同じような形式の派生反応が多い。

次はそれをまとめて押さえよう!

まだ続くの・・・?

次回に続く

 

関連記事
(1) 女子高生と学ぶ!エノラートのアルキル化:カルボニルのα位で起こるSN2反応
(2) 女子高生と学ぶ!マンニッヒ反応・クライゼン縮合・ヘンリー反応
(3) エノラートとエノラートがクロスカップリングする合理的戦略
(4) ジボリルアルカンからビスエノラートができる!α位二修飾ケトン合成

 

sponsored link
この記事を書いている人 - WRITER -

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Copyright© 有機化学論文研究所 , 2019 All Rights Reserved.