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NHC触媒によるアルデヒド(Breslow中間体)とカルボン酸誘導体の脱炭酸カップリング

 
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Breslow中間体からの電子移動を利用する

N-Heterocyclic Carbene-Catalyzed Decarboxylative Alkylation of Aldehydes

J. Am. Chem. Soc., Article ASAP DOI: 10.1021/jacs.9b00880
Takuya Ishii, Yuki Kakeno, Kazunori Nagao* , and Hirohisa Ohmiya*

NHC(N-heterocyclic carbene)

カルベンは炭素から手が二つしか生えていない化学種である。その一種としてNHC (N-heterocyclic carbene)は比較的安定なカルベンとして知られている。NHCの金字塔は、1991年にArduengoらによって合成された安定で結晶性の化合物である。


図1. 初めて単離・結晶構造解析されたNHC

当初は構造自体に興味があって、最初から応用を考えていたわけではないと思われるが、その後の展開の速さは恐ろしい。NHCの重要な応用例として金属の配位子があげられる。有名どころではグラブス触媒やPEPPSI触媒に、カルベン配位子が用いられている。

また、NHCはそれ自体が求核触媒として働くことが知られている。特にアルデヒドと反応して発生するBreslow中間体をうまく使う反応が相次いで報告されている。

アルデヒドの炭素は通常求電子的であるが、Breslow中間体になると求核的な炭素になる。つまりNHCを用いることで、アルデヒドの極性変換を触媒的に行うことができるのだ。


図2. Breslow中間体の発生

 

Breslow中間体から電子を動かせ

今回、紹介する論文のアイデアはしびれた。

アルデヒドとNHCから発生したらBreslow中間体が極めて電子豊富であることに注目。

この中間体から、一電子還元することでラジカルが発生するカルボン酸誘導体Aへ電子移動させる。するとBreslow中間体の一電子酸化体とアルキルラジカルが発生し、これらがカップリングして炭素-炭素結合が形成する。


図3. Breslow中間体からの電子移動を利用したカップリング

なんだか複雑に感じるが、反応の全体像は、アルデヒドとカルボン酸誘導体AをNHC触媒存在下混ぜると、くっつくという非常にシンプルなもの。


図4. NHC触媒によるアルデヒドのアルキル化

おお~シンプルかつエレガント!!(^O^)

 

所感

卓越した有機化学センスを感じずにはいられない衝撃的反応。

最近流行ってるレドックス活性のあるカルボン酸誘導体と、今となっては成熟感のあるNHCの触媒反応を組み合わせるのか・・・

無理がないのに新しい、超スマートなアイデア。

不思議というかすごいな、と思うのは、特殊なものを使っていないのに、このようなシンプルかつイケてる反応を見つけてくるところ。

なんでこういう反応を世界で誰よりも早く見つけられるのかなぁ・・・??

ん~わからない、すごい。これがセンスなの?

まぁ、今回の報告だけで、著者らのビジョンが私に見えるわけないので、今後の展開もチェックして、そのアイデアのエッセンスを学んでいきたいなぁ、と思っています。(^O^)/

参考文献
(1) Arduengo, A. J.; Harlow, R. L.; Kline, M.  J. Am. Chem. Soc. 1991113, 361. 

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