Synthesis of (-)-okundoperoxide and determination of the absolute configuration of natural (+)-okundoperoxide
Tetrahedron Lett. 2017, 58, 3884.
Naoki Mori, Daichi Sakoda, Hidenori Watanabe
endoperoxideを有する天然物の全合成
endoperoxide化合物は抗マラリア薬のatremisininに代表されるように様々な生理活性がある。
このような化合物を人の手で合成できるようにするのは非常に重要だ。
図1. endoperoxide骨格を持つ天然物。左が今回合成された化合物で右が有名な抗マラリア薬
と、まーこんな建前は置いといて、合成化学的には明らかに不安定そうなendoperoxide構造をどうやって合成してやろうかというところに興味が持たれる。
そんなendoperoxide 構造を持つokundoperoxideをかなりかっこいい方法で合成する手法が報告された!
報告されたのは東京大学の渡辺先生のグループで、単に合成しただけでなく、立体の決定がされていなかったokundoperoxide の立体を確かめることに成功した。
普通に合成しようすると
ペルオキシ化合物は不安定なのでできるだけ最終段階で導入したい。
すると、okundoperoxide を素直に合成しようとすると2のような化合物に一重項酸素を反応させようとするルートが思いつく。
図2. すぐ思いつく合成ルート。これは無理そう。(論文より引用)
しかし2はかなり嵩高くなっていて環化反応が進行するか怪しい。
しかもさらに問題なのは、このルートで不斉反応を行うのはかなり厳しいということだ。
あと生成物3の二重結合を還元しなければならないのも問題だろう。
二重結合より先にペルオキシドが還元されそうだよね。
著者らの合成法を見てみよう
ジュリア反応で合成した14のアセタールを外す。
そしてジオール16に一重項酸素を反応させ、ペルオキシ化合物17を得る。
その後ジオールをエポキシにして5を合成した。
図3. 中間体の合成。関係ないところにペルオキシドが巻いたように思える。
え!?そこでペルオキシド巻いちゃうの?(°_°)!
ここからどうokundoperoxide へ持っていくのか、、、
酸によるカスケード反応によるフィニッシュ
なんとこの合成は鍵反応が最終段階にある。
ここから一段階のカスケード反応でokundoperoxideが得られる。
5を酸で反応させると、まずアセタール部位が開環し、フリーのヒドロペルオキシ部位が生成する。その後エポキシから生じるアリルカチオンと反応して巻き直し、endoperoxide 構造が構築され、目的のokundoperoxide が得られる。
図4. ペルオキシドのカスケード反応による巻きなおし。
かっこよすぎーー!!\(^o^)/
ベルオキシドがぐるっと回って完成か~
最終工程の収率は34%と高くないが、反応の難易度を考えると仕方ない。
この合成法なら立体も決められるし凄いね!
TLなん?
今回全合成されたokundoperoxide は小さい分子だが、不斉点も多く、何より不安定なendoperoxide 構造を持っている。
しかも本報告は
・first synthesis
・不明だった立体を決定
・チャレンジングかつ合理的な合成ルート
という特筆すべき点がある。
収率が低いステップがいくつかあるが、それに余りある素晴らしい成果だと思う。
論文を是非見て欲しいが、結構試行錯誤もあったようで実験者の方は大変だったでしょう。
全合成は専門外でよくわからないですが、こんな素晴らしい成果がTLなんですか、、、(^_^;)
早く通したいとかTLが好きとか著者側の事情があったなら全然いいんですけど、全合成の分野としてこの成果でTLというのが相場なら、そりゃあ全合成する人減ってくよね、、、
全合成は有機合成化学に欠かしてはならないものだからなぁ(´ー`)
もっと評価されるようになった方がいいと、全合成やったことない私は思います。(^_^;)
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