ベンザインでC-H官能基化する!?
Intramolecular hydride transfer onto arynes: redoxneutral and transition metal-free C(sp3)–H functionalization of amines
Chem. Sci. 2018, DOI: 10.1039/c8sc00181b
Fahima I. M. Idiris, C´ecile E. Majest´e, Gregory B. Craven and Christopher R. Jones
ベンザイン高反応性の歪んだ三重結合
三重結合は通常直線状に炭素が並ぶ。反応性もそこまで高くなく普通に試薬として取り扱えるものが多い。
しかしながら三重結合を環で縛って無理やり捻じ曲げると極めて反応性が高い活性種となる。
その典型例がベンザインで、ベンゼンの二重結合の一つが三重結合になったような形をしている。ベンザインは滅茶苦茶反応性が高いので、フラスコにためておくなんてことはできない、発生したらその場でトラップしないと自分同士で反応してしまう。
今回の紹介する論文はベンザインを適切な位置で発生させることで分子内水素移動が起きることを示し、それによってC-H官能基化できることを示した。
反応概要
・α位に炭素水素結合を有するアミンにケイ素とトリフラートを有するベンジル基をぶら下げる。
・フッ化物イオンを作用させるとベンザインが発生する。
・ベンザインが分子内でアミンのα位の水素を奪い、イミニウムが発生する。
・ベンジル基はアニオンが立つことになるが、系中から求核剤のプロトンを拾ってくる。
・脱プロトン化された求核剤とイミニウムが反応する。
図1. ベンザインの分子内水素移動によるC-H官能基化(論文より引用)
なるほど~かなり凝った反応だねぇ~(^O^)
ベンザインを発生させるための置換基はベンジル位になっているのも、きれいだよね。
求核剤のスコープ
この反応で興味深いのは求核剤のスコープ。かなり酸性度が低い求核剤を用いることができる事。
以下のようにアセトニトリル、ニトロメタン、クロロホルム、フェニルアセチレン、ペンタフルオロベンゼンなど強塩基でないとプロトンを引き抜けない求核剤を用いることができる。
図1の活性種11の塩基性が極めて高いことがカギだろう。
図2. 求核剤いろいろ
雑感
用いることのできるアミンはテトラヒドロイソキノリンが良好で、それ以外のアミンは微妙な収率になってしまう。もう少しアミン側のスコープが広ければ夢広がる反応だったんだけどねぇ。
ただベンザインを発生させて分子内水素移動させるアイデアは非常にすごく面白いから、これを皮切りに別の反応を展開できるのではないでしょうか。
ベンザインって発生させるのが結構大変だけど、その分変なことできるからなぁ。
いつか扱ってみたいところではある。(^_^)
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