geminal二官能基化ケトンの新合成法
A Coupling Approach for the Generation of α,α-Bis(enolate) Equivalents: Regioselective Synthesis of gem-Difunctionalized Ketones
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 2036.
Carmelo E. Iacono, Thomas C. Stephens, Teena S. Rajan, and Graham Pattison
複雑なケトン作るって難しい
ケトンのエノラートを求電子剤と反応させるのは非常に有用な分子変換である。しかし、その時たまに「どのプロトンを引き抜けるか」で面倒になる。
例えば下のような二種類あるケトンのα位を選択的にジメチル化する事は難しそうだ。
いろんな位置で反応した副生成物ができてしまいそうだ。
図1. ケトンのα位の二官能基化:これはむずそう。
そんな問題をエレガントに解決するシャレオツな戦略が報告された!
反応概要
・エステルに対してジボリルアルカンの脱プロトン化体を反応させると、 以下のようなα位にホウ素を有するホウ素エノラート中間体が生成する。
・この中間体はビスエノラート等価体として求電子剤と二回反応し、対応するgeminal二官能基化ケトン生成物を与える。
・求電子剤としてはフッ素、塩素、メチル基 などが導入可能。
図2. ビスエノラート等価体の発生(論文より引用)
まじかぁ!キレイな合成法ね!(^○^)
実際にさっきのジメチル化も選択的に行うことができる。
図3. ジボリルアルカンからビスエノラート等価体を発生
温故知新
そもそもエステルにジボリルアルカンの脱プロトン化体を反応させてビスエノラート中間体が発生する事はかなり昔(1977)に報告されていたらしい。(参考文献1)
ただ当時はプロトンのみでトラップされて単純なケトンが得られていたそうな。
だから今回の論文は求電子剤を変えただけという意地悪な見方もできるが、ビスエノラート等価体という新たな着眼を見出して再開発するのは慧眼だよなぁ。(*´ー`*)
後、個人的にこの反応はエステルからケトンが得られる手法として興味深い。
普通エステルにアニオンさしたら、ケトンで止まらずにもう一回反応しちゃうもんねー
エノラートの形になれば二つ目の付加が進行しないのね・・・( ˘ω˘ )
不勉強ながら知らんかった、勉強なります。
これもそんな新しいことではなく、エステルから得られたホウ素エノラートを別の求電子剤でトラップすることは向山先生が報告済みのようだ。(参考文献2)
いい反応だと思うし、得られる生成物も有用性が高いと思うので全合成に使われたりしないかな?
楽しみですね!(^○^)
参考文献
(1) Matteson, D. S.; Moody, R. J. J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 3196−3197.
(2) Mukaiyama, T.; Murakami, M.; Oriyama, T.; Yamaguchi, M. Chem. Lett. 1981, 10, 1193−1196.
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