懐かしのヨードホルム反応が強力な合成ツールへ
One-step Conversion of Levulinic Acid to Succinic Acid Using I2/t- BuOK System: The Iodoform Reaction Revisited
Scientific Reports volume 7, Article number: 17967 (2017) doi:10.1038/s41598-017-17116-4
Ryosuke Kawasumi, Shodai Narita, Kazunori Miyamoto, Ken-ichi Tominaga, Ryo Takita & Masanobu Uchiyama
高校で誰もが習うヨードホルム反応
ヨードホルム反応はアセチル基やその還元体のアルコールを持つ化合物に塩基とヨウ素を作用させると、黄色のヨードホルムが沈殿するというもの。
図1. ヨードホルム反応
この反応をかけて沈殿が生じればアセチル基かその還元体の二級アルコールが分子に含まれていることが定性的にわかる。
高校の時はあんまり考えてなかったけれど、よくよく考えると炭素-炭素をあっさり切ってしまうすごい反応。
しかしながら大学に入ってから、合成的な応用は見かけない。
そこで登場したのが今回紹介する東大内山先生らによる論文!
なんでもヨードホルム反応の条件を改良することで合成的に使える反応に仕上げたらしい!
古典的な条件では
まず古典的な反応条件で合成的に使えるか検証した。
以下のような1や6に水酸化カリウムとヨウ素を作用させる古典的なヨードホルム反応にかけた。
図2. 古典的ヨードホルム反応での検討(論文より引用)
その結果は副反応が進行してしまい、目的のカルボン酸2の収率は非常に低い。
んーまー定性的にアセチル基があるかないか調べるための反応だもんね。あんまり効率がよくなくても仕方ない。
改良ヨードホルム条件
今回の条件の改良点は
・塩基にtBuOKを用いる。
・溶媒にtBuOHを用いる。
・事前にtBuOIを発生させる。
・系中の水の量を1-10当量程度に制御する。
割とシンプルだがそれぞれが非常にクリティカル。特にかさ高い塩基を用いることはポイントか。立体的にすいているアセチル基を選択的に反応させられるのだろう。
図3. 改良条件ヨードホルム反応(論文より引用)
最適化された条件では80%を超える収率で目的化合物が得られる。合成的にも十分有用だ。
すげー!(゜o゜)
いろんな基質にも使える。
ヨードホルム反応改め酸化的脱メチル化反応のスコープはなかなかひろい。
オレフィンを持った基質や二級アルコールも脱メチル化できる。
図4. 改良ヨードホルム反応の基質適用範囲(論文より引用)
ヨウ素使っているにもかかわらず、オレフィン残せるんだね。事前にヨウ素をtBuOIにしておくためか、案外反応はマイルドなようだ。
これはいい反応ね!(^o^)
雑感
古くからある反応だが、開発の余地があったんだねぇ~
できるなら昔の人がやっていてもいい気がするが、案外見落とされていることって多いのかもしれない。(´-ω-`)
非常にシンプルでいい反応に思えるし、全合成とかでも使われ得るポテンシャルを感じる。
あと、中間体のαトリヨードケトンの反応相手を設計して、いろんな反応に展開できるかもしれない。
今後も要チェックや!
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