David W. C. MacMillan, 第二回:1999~2006:独立からプリンストン大に移るまで

      2018/01/29

David W. C. MacMillan, 第二回:1999~2006:独立からプリンストン大に移るまで

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独立後のテーマ設定

第一回で紹介したように、Macmillan先生はEvans研でアルドール反応を開発していた。
Evans先生はアルドール反応や不斉ディールスアルダー反応の大家であるので、MacMillan先生はEvans研で相当不斉反応に関する知識を身につけたことと思う。

金属触媒を用いて不斉分子変換を研究すれば、ある程度成果を量産できそうだ。

しかしながら、ここがアカデミックの難しいところで、前のボスのテーマを引き継ぐようなことをしてしまうと成果は出ても評価は得られない。
1人の研究者MacMillanでなくEvansチルドレンといった扱いを受けてしまう。

Evans研で学んだ自分の詳しいアルドール、ディールスアルダーで戦いたい。でもEvans研と違うことしなければいけない。

このジレンマを解決するためMacMillan先生が取った方針はまさに天才的。

 

分子変換から触媒開発へシフトする

有機分子が不斉触媒として働くということは当時ほとんど知られておらず、革命的なアイデアであった。MacMillan先生が開発したのはキラルイミダゾリジノン、後にMacMillan触媒と呼ばれる有機触媒である。


図1. MacMillan触媒:アミノ酸から簡単に合成できる。チューニングもできる。

キラルな二級アミンがカルボニルと反応することで、求電子性の高いイミニウムが発生しジエンと反応させることで、不斉ディールスアルダー反応が進行することを2000年に報告。(参考文献1)


図2. MacMillan触媒を用いた不斉ディールスアルダー反応

マーケティングも完璧だ。

LUMO activation

かっこよくない??

なんかすごい新しい響き。
よく考えたらルイス酸もLUMOを活性化しているので、あんまり言葉自体の意味は新しくないはずだが。(^_^;)

この驚きの報告からMacMillan触媒を使った反応開発に注力していく。


図3. MacMillan触媒を用いた反応の基質範囲拡大の年表

反応基質 ab不飽和アルデヒド ab不飽和アルデヒド シクロペンタノン

反応相手 ジエン ニトロン ピロール アニリン インドール シロキシフラン クロロキノン ハンチュエステル ヒドロキシアミド

これらの基質ひとつひとつがほとんどJACSに掲載。
やばっ。。。ブルーオーシャンとはこのこと。

 

この期間のほかの仕事

・プロリンを使ったアルドール反応

プロリンを触媒に用いて二種類の異なるアルデヒドのクロスアルドール反応を報告している。(参考文献2)


図4. プロリンを用いたアルデヒドのクロスアルドール反応

さらにこの反応を用いて糖の二段階合成を報告。(参考文献3)

プロリンといえばList先生のイメージですが、MacMillan先生もすごい成果ですね。。。

 

・アンモニウム塩で鈴木・宮浦カップリング

トリメチルフェニルアンモニウム塩が鈴木・宮浦カップリングの求電子剤として用いられることを報告。(参考文献4)


図5. アンモニウム塩で鈴木・宮浦カップリング

MacMillan先生の論文リストの中でかなり異質に見える、どっからやってきたかわからない反応。
不活性なシグマ結合の変換における先駆的な研究で、かなり重要な論文。
ただこの反応を深堀はしていないようだ。

鈴木宮浦カップリングという古典的な分野では、反応の不斉化など基質適用範囲の拡大から勝負のポイントをずらし、不活性基質の利用という未来を先取りしたコンセプトで勝負している。

 

・クライゼン転位

前に開発した反応を二年たたないうちに不斉反応化。さすがYoon先生やで。。。(参考文献5)

図6. キラルルイス酸による不斉クライゼン転位

 

・全合成

Overman研で全合成をしていたMacMillan先生、いつか全合成したいという気持ちはあったのだろう。
MacMillan触媒をフルに使って(-)-Flustramine B, (-)-Debromoflustramine Bを全合成。(参考文献6)


図7. (-)-Flustramine Bの合成:MacMillan触媒がきれいに決まっている。

自分の触媒を引っ提げて原点回帰、うれしかったでしょうね~

まさにカルフォルニア時代の集大成!!

 

David W. C. MacMillan, 第二回:1999~2006:独立からプリンストン大に移るまでのまとめ


今回紹介したのは独立直後8年分くらいの成果だ。

しかも別に全部紹介したわけでもない。

うそでしょ。。。やばすぎ(^_^;)
すでに優秀な研究者の一生分の成果がでているような、、、

ただアイデアが天才的なだけでなく、かなり戦略的に上手くやっているのも間違いない。

・古典的な分野の反応開発は、基質範囲の拡大と別の軸で戦う。(有機触媒で既存反応をやる)
・新たな軸を打ち出すときはかっこいい言葉で売り出す。(LUMO activation)
・新たな軸を確立したら、そこで基質範囲拡大。(ひたすら基質振る)

これはかなり意識しているようで、MacMillan触媒以外の別のプロジェクトでもメインストリームの流れと別の軸で戦うことを徹底している。

このような戦略で独自性と過去の知見の利用によるハイレベルな化学を両立しているのだろう。

MacMillan先生は流行りの最先端でメインストリームの研究をしているとつい思ってしがちだが、後追いがでてきてメインストリームになるだけで、開拓するときはかなりチャレンジングなことをしている。

まーこんなうまくやるには卓越したセンスが必要ですが、、、(^_^;)
いくらか参考になる部分ではありますよね。

すごいよね、、、でもこっからもっとすごいんだ。。。

反応は芸術の域へ。。。!!

第三回はこちら

<参考文献>
(1) J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 9874.
(2)  J. Am. Chem. Soc. 2002, 124 , 6798.
(3) Science 2004305, 1752.
(4)  J. Am. Chem. Soc. 2003, 125 , 6046.
(5) J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 2911.
(6) PNAS 2004, 5482.

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