研究者の研究:David W. C. MacMillan, 第一回

      2018/01/29

David W. C. MacMillan, 第一回

ドクター、ポスドク、独立はじめまで

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有機化学の最先端を切り開き続けるMacMillan先生

有機化学を研究するならだれもがMacMillan groupの論文を読んで、その芸術的な反応に何度も舌を巻いたことだろう。

最近の論文を見ているだけでも楽しいのだけれど、MacMillan先生がどのような背景で、どのような流れで今の化学にたどり着いたかを調べてみることにした。

そこから一流研究者の研究戦略みたいなものが見つかればいいなと思っている。

ということで、何回かにわたってMacMillan先生の研究を研究してみたい。

MacMillan先生の略歴


図1. David MacMillan (外部リンク1より)

まずはMacMillan先生の略歴を見てみる。

1987-1991 Undergraduate degree in chemistry at the University of Glasgow.
1991-1996 Doctoral studies with Professor Larry E. Overman at the University of California, Irvine.
1996-1998 Postdoctoral research fellow with Professor David A. Evans at Harvard University.
1998 Dave began his independent research career at the University of California, Berkeley.
2000 Joined the department of chemistry at the California Institute of Technology.
2004 Appointed as Earle C. Anthony Professor of Chemistry at California Institute of Technology.
2006 Appointed as the A. Barton Hepburn Professor of Chemistry at Princeton University.
2006 Appointed as Director of the Merck Center for Catalysis at Princeton University.
2010 Appointed as Chairperson of the Department of Chemistry at Princeton University.
2011 Appointed as James S. McDonnell Distinguished University Professor of Chemistry at Princeton University.

おおまかにとらえると
博士課程:Larry E. Overman研 → ポスドク:David A. Evans研 → 独立

ということで超大御所研究室出身のエリートであることがわかる。

ただ最新原理による最新反応をバリバリ開発するMacMillan先生の出身が、割とクラシカルな化学が得意なOverman研、Evans研であったことは割と意外に感じた。

この時代MacMillan先生はどんな研究をしていたのだろうか?

 

Overman研時代

今の論文報告ペースと質がすごすぎるMacMiilan先生。
学生時代はというとそれほど多くの論文を出しているわけではない。しかしながらOverman研時代に報告している(-)-7-deacetoxyalcyonin acetateの全合成は圧巻だ。(参考文献1)
著者はMacMiilan先生とOverman先生の二人だけ。要するに一人で合成したのだろう。
すげー(^_^;)


図2. MacMillan先生の博士課程時代の仕事。きれいな合成だ。

鍵反応はOverman研で前に開発されていたプリンス-ピナコール反応によるテトラヒドロフラン環構築。
立体を制御しつつきれいに縮環が構築される。
無理がなく無駄のないエレガントな合成だ。

MacMillan先生の源流は全合成なんだね、ちょっと私には意外に感じました。

 

Evans研時代

ポスドクは全合成から一転、反応開発に取り組んでいたようだ。
Evansアルドール反応でおなじみのEvans研でそのメインストリームの研究であるアルドール反応の開発に取り組んでいた。(参考文献2)
スズ触媒を用いた不斉アルドール反応である。


図3. ポスドク時代の仕事。完成度が高い。

収率、ジアステレオ選択性、エナンチオ選択性すべて高い水準。
今の反応の完成度の高さはこの時代に身につけたものだろうか。

 

University of California, Berkeley時代

Evans研でのポスドクを経て独立したMacMillan先生。
ここからの論文ペースはちょっと異常。

今回は独立後の初論文を見てみよう。

ケテンを用いたルイス触媒によるクライゼン転位反応でなかなかおもしろい反応。(参考文献3)

図4. 独立はじめの一報。

ケテンを利用したクライゼン転位反応は似ている反応が昔に報告されていて、本論文にも記載されている。(参考文献4)


図5. 先行論文:ケテンを利用したクライゼン転位。

ケテンとアリルエーテルを反応させカチオン性の中間体を経てクライゼン転位する。
ただこの反応は非常に求電子性の高いケテンに限られていたようだ。

もしかしたらこの反応はOverman研時代から知ってたんではないですかね?

MacMillan先生はケテンを用いるクライゼン転位に対しルイス酸触媒を用いることで基質のケテンの種類を増やすことができることを示した。

この反応の開発にあたり、きっと転位反応が得意なOverman研時代の経験が生きているのだろう。
またルイス酸を使った反応開発はEvans研で身につけた知見が存分に使えたことだろう。

独立後の初仕事としてはすごく自然な始まりにみえる。

あとこの論文でめちゃくちゃ興味深いのは著者のメンバー。

全部で3人なのだがMacMillan先生は当たり前として、、、
T. P. Yoon。。。?
V. M. Dong。。。?

今、超話題の一流有機化学者じゃん!!

なんてこった!
やっぱ優秀な人には優秀な人材が集まるもんなんですね。

独立しょっぱなのメンバーがこれとは。

T. P. Yoon先生はEvans研から、V. M. Dong先生はOverman研から。
なるほど、Yoon先生も Dong先生も学閥的につながっているとはいえ、いろんな選択肢がある中でMacMillan先生の新しい研究室に入ったのね。
優秀な人はボス選びもうまいんですかね、、、(^_^;)

なんにせよ、独立前から相当MacMillan先生の優秀さが認められていたんでしょうね。

David W. C. MacMillan, 第一回:ドクター~ポスドク~独立はじめまでのまとめ

・やはりというべきか、かなりエリートな経歴。
・源流は全合成、しかも超ハイレベル。
・独立した時はこれまでの経験を存分に活かす。
・優秀な人間は優秀な人材を呼ぶことができる。

MacMillan先生の優秀さはなかなか真似できるものではないが、個人的に独立後のテーマ設定に感心した。
Overman研で叩き込まれた転位反応をEvans研で学んだルイス酸の化学で反応開発する。

全合成は成果が早く必要な若手がやるには大変だし、Evans研の化学になってしまうアルドールをそのままやるわけにもいかない。
しかしその両方の知見を活かした反応開発。

もちろんいろいろな選択肢がある中で実際にこういった上手いテーマを設定するのは難しいけど、後から俯瞰すると「そりゃぁうまくいくよね」というような研究方針。
新しいことをはじめる方針として非常に参考になります。

 

今回はこんなところ!

こっからMacMillan先生のすごさはますます加速してくよ!!

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参考文献
(1) D. W. C. MacMillan and L. E. Overman, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 10391.
(2) Evans, D. A.; MacMillan, D. W. C.; Campos, K. R., J. Am. Chem. Soc.1997, 119, 10859.
(3) T. P. Yoon, V. M. Dong, D. W. C. MacMillan, J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 9726.
(4)  Malherbe, R.; Bellus, D. HelV. Chim. Acta 1978, 61, 3096.

外部リンク
(1) MacMillan Group

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