Why Do Simple Molecules with “Isolated” Phenyl Rings Emit Visible Light?
J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 16264.
Haoke Zhang, Xiaoyan Zheng, Ni Xie, Zikai He, Junkai Liu, Nelson L. C. Leung,
Yingli Niu, Xuhui Huang, Kam Sing Wong, Ryan T. K. Kwok, Herman H. Y. Sung,
Ian D. Williams, Anjun Qin, Jacky W. Y. Lam, and Ben Zhong Tang
蛍光する有機分子
紫外光を照射すると蛍光を放つ、光る有機分子がある。
そういった分子はほとんどの場合、ピレンなどに代表されるように共役が広がった化合物である。
共役が広がる事でHOMOとLUMOのギャップが小さくなる。
つまり励起および蛍光で出入りするエネルギーが小さくなるので、吸収波長及び蛍光波長は長くなる。
実際には熱などでエネルギーがある程度失われるので、蛍光波長はいくらか長波長にシフトするが、吸収波長と蛍光波長はだいたい同じくらいになることが多い。
図1. 共役が広がるとHOMO-LUMOギャップが小さくなる。吸収波長と蛍光波長は長くなる
また、蛍光波長が長くなって可視光領域に入ると人間の目にも光って見えるようになる。
逆にいうと炭素-炭素二重結合やヘテロアトムで共役が繋がってないと、蛍光が可視光領域まで長くなって光ることは考えにくい。
なぜか光る!? テトラフェニルエタン
この分子を見て欲しい。
フェニル基が4つ付いているがそれぞれをつなげているリンカーはアルキル基なので、芳香環それぞれの共役は繋がっていない。
図2. テトラフェニルエタン:共役していなくて、とても可視光領域に蛍光を放ちそうにない。
実際に吸収波長は 270 nmでベンゼンとほぼ同じ。とても可視光領域で蛍光を放ちそうにない。
が、このテトラフェニルエタン、固体状態で 460 nmの青色の蛍光を放つらしい!!
当然 ベンゼンは可視光の蛍光を放つことはない。
図3. 固体状態のテトラフェニルエタンに紫外光を照射すると青色の蛍光を放つ(論文より引用)
まぶし!!なんでや!?
こんな分子ベンゼンと一緒でしょ!(゜o゜;
著者らはこの分子が可視光領域で蛍光を放つ理由を計算化学により考察。
その結果、励起状態の基質が直接共役していないに関わらず、芳香環の間で相互作用している事がわかった。
アルキル鎖を介して励起状態の芳香環の電子が相互作用するthrough space conjugation によって励起状態のHOMO-LUMOギャップが小さくなる 。
基底状態のHOMO-LUMOギャップ:5.918 eV
励起状態のHOMO-LUMOギャップ:3.439 eV
図4. through space conjugation(論文より引用)
基底状態では大きくない相互作用が励起状態で大きくなる、なるほどーそういう原理で吸収波長はベンゼンに近いにも関わらず、可視光領域の蛍光を出すのね。
納得はしたけど不思議。
いやはや、有機化学は、難しい。(-_-;)
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