Dehydrogenative desaturation-relay via formation of multicenter-stabilized radical intermediates
Nat. Commun. 2017, doi:10.1038/s41467-017-02381-8
Yaping Shang, Xiaoming Jie, Krishna Jonnada, Syeda Nahid Zafar & Weiping Su
ポリエン化合物
ジエン、トリエンなどの多不飽和化合物(ポリエン)はディールスアルダー反応の基質になったり合成中間体として有用なだけでなく、案外天然物でも見られる骨格だ。
図1. ポリエン天然物の例
オレフィンが繋がって共役が広がるほど、ポリエンの反応性は増して合成は難しくなる。
wittig反応や鈴木・宮浦反応などでオレフィンを組み立てて合成していくのが定跡か。
紙に書くのは簡単でも作るのは難しい簡単でない構造だ。
ここで有機化学にそこそこ詳しい小学生なら「アルキル鎖を酸化して一気にポリエンになったらいいのに」とか考えるだろう。
図2. アルカン酸化すればいいやん、ってアプローチ。できたら苦労ない。
大人としては「そんなんできたら苦労ないんだよ」とやさしく諭すところ。
アルキル鎖をオレフィンにするような酸化条件に、ポリエン化合物が耐えられるのか?という先入観が少なくとも私にはある。
が、なんとできちゃったらしい!!
まじで!?(゜o゜)
アルキル鎖を持つカルボニルに対し、銅触媒と酸化剤のTEMPOを作用させると対応するジエン化合物が得られた。
図3. カルボニル化合物の不飽和化によるジエン合成。
結構ありがちな反応系なのね・・・なんで今までなかったんだろ。
収率にばらつきがあるがカルボニルについてはケトン、アルデヒド、エステル、アミドを用いることができる。
すごいわ(^_^;)
天然物合成
この手の反応は形式が面白いだけで制限が多く、実際の合成へ応用することは難しい場合が多い。
しかし著者らはなんと今回の反応を用いることで迅速に天然物が合成できることを示している!!
末端アルコールを基質に用いるとジエンのアルデヒドが得られる。(下図a)
トリエンのアルデヒドも26%の収率ながら得ることもできる!!(下図b)反応の難易度考えたらかなり収率高いよね。
これらの生成物をwittig反応することで天然物のLignarenone BとNavenone Bをいずれも2ステップで合成することができた。
なんちゅー合成ルートや!!(゜O゜)
Lignarenone Bについて過去の報告では7ステップ17%、今回は2ステップ41%。
本手法が画期的な反応であることがよくわかる。
反応中間体
反応途中を観察することで以下の中間体を経ることを見出している。
1. エノンが生成
2. TEMPO付加体が生成
3. 加熱によるTEMPOHの脱離
なるほど、あとラジカル経由であることも確かめられていている。
んー、やっぱりなかったのが不思議なくらいのシンプルさだね。
やっぱポリエンなんか一気にできないという先入観なのか?
アルキル鎖をポリエンに変換するチャレンジングな反応。
もちろんできることとできないことがあると思うが、有用なビルディングブロックを供給する有力な手法と思われる。
この生成物使って何かできないかなー
なんて思ったりする。(´ー`)
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