A three-membered ring approach to carbonyl olefination
Nat. Commun. 2017, ASAP. DOI: 10.1038/s41467-017-01036-y
Supaporn Niyomchon, Alberto Oppedisano, Paul Aillard1 & Nuno Maulide
炭素炭素二重結合の重要性をもはや言うまでもないだろう。
有機化学をそこそこやっている人なら、付加反応など何らかの反応をさせたことがあるはず。
となると二重結合をいかにつくってくるか?、が大きな問題になる。
二重結合を作る有名なところをあげると、、、
1. wittig反応
2. ヘック反応
3. メタセシス反応
4. Tebbe 試薬
などなど全合成でもめちゃめちゃよく見る反応ばかりだ。
上三つはなんとノーベル賞だ!
いかに二重結合を作るのが貴重かつ大事かということがよくわかる
もし二重結合を合成する新しい選択肢が増えれば新しい合成法として非常に重要になるに違いない!!
(たいていは既存反応で十分だが、反応開発の人間にそんなこと言ってはならない、、、!)
今回の論文は二重結合の一風変わった合成方法が報告されている。
1.アルデヒドとヒドラゾンを反応させる。
2. カルベン等価体を反応させ三員環のNイミニルアジリジンにする
3.加熱するとジアゾ化合物が脱離、二重結合ができる(こんな脱離があるんだね!)
図1. 反応のアウトライン:アジリジンから二重結合を合成
反応のポイントは
・アルデヒドはナフタレン以外にもαβ不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド類、アルキルアルデヒドと幅広く適用可能
・カルベン等価体として硫黄イリドを用いている。バリエーションはあんまり検討していない。
・E/Zは基質に依存。あんまり選択性はない。
・反応機構を実験的に調べていてジアゾの脱離は間違いなさそう。
著者ら曰「三員環を鍵中間体とした新しい二重結合形成反応だぜ!」とのこと、なるほど確かに珍しいかも。
でもこれだけだと「珍しいだけじゃな~、ほかにいい反応あるし~、てかイミノ化、三員環形成、脱離の3ステップになってめんどくね?」という文句言われそうですが、、、
しかし著者らはそういったちゃちゃを入れさせまいと、既存反応との比較を行い優位性を示している。
図2. 本反応の優位性の証明:立体保持についての過去反応との比較
まず、今回の反応はα位に不斉点を持つアルデヒドが立体を保持したまま二重結合になりますよと。なるほど。
で、既存のwittigとかだとα位の立体が崩れると。。。
おお~すごい、、、
こういう比較において「本当に既存反応がダメ」は議論の余地の大きいとところだが、、、(ほかの条件ならee持つかもしれないし)
とはいえ一度ヒドラゾンと反応させることで反応がマイルドになる可能性はかすかに感じますね。
実際は既存反応に比べて優位性が現状ほとんどないと思いますが、こういったかすかな差を少しでも拾い上げようとする姿勢は大変勉強になります。
面白い反応だなー!
今回の論文も非常に面白かったのですが、反応形式が新しそうなので今後の開発展開は非常に楽しみです!!
わくわく!!
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