リグニンでメチル化&炭酸プロピレン合成
Selective utilization of methoxy groups in lignin for N-methylation reaction of anilines
Chem. Sci. 2019, ASAP. : DOI: 10.1039/c8sc03006e
Qingqing Mei, Xiaojun Shen, ab Huizhen Liu, Hangyu Liu, Junfeng Xianga and Buxing Han
リグニンをうまく使ったものが世界を制す
リグニンは木材に20~30%くらい含まれているポリフェノール系の高分子である。
図1: リグニンの部分構造
この何にも溶けない構造がぐちゃぐちゃの高分子は、紙パルプを作ったりしたときの副生成物(つまりゴミ)として得られる。ということは、毎年大量に不要物として出てくるわけで、誰もがリグニンの使い道に頭を悩ませている。
リグニンの価値ある利用法を見つけることができれば、それはまさに現代の錬金術といっていいだろう。
当然すでに様々な応用法が研究されている。何らかの手法で分解して低分子を得てきたり、ある程度小さくして可溶化して材料への応用を試みたり。そのアプローチは様々だ。
しかしながらどうも決定版といえる応用先はまだ見つからないようで、今も精力的にリグニンの利用が探索されている。
頭を柔軟に、意外な利用法を考える必要もあるのかもしれない。
リグニンをメチル化剤として用いる
そんな中、著者らはこれまでの発想とまったく異なるリグニンの利用法を報告した。
なんとリグニンに含まれるアニソール骨格のメトキシ基をアニリンのメチル化剤に利用するというものである。
図2. リグニンのメトキシ基に注目
まず実際に、アニソールを用いてメチルアニリンのメチル化が進行することを確認。
図3. アニソールをメチル化剤にするモデル反応
なお溶媒にイオン液体、触媒としてLiIを用いる事が必須である。
その後、メチル化剤をアニソールからリグニンに変えて検討。なんと選択率97%、収率70%で目的の反応が進行することを見出した。
図4. リグニンをメチル化剤にする
OH・・・!クレイジー・・・!
アニソール骨格のメトキシ基がメチル化剤になるだけでもわりと驚きそうになるが、全然溶けないリグニンでもその反応が進行するとは・・・!!(゜o゜)
反応機構はヨウ化メチルが発生するというもの。気になる人は論文を見よう。
余ったリグニンは触媒へ
余ったリグニンは当然、脱メチル化されている。
著者らは反応後のリグニンは脱メチル化され、水酸基リッチなことに着目し、水素結合授与体として働くのではないかと考えた。
実際にプロピレンオキシドと二酸化炭素の環化付加反応の触媒への応用を検討し、オリジナルのリグニンより活性が上がっていることを示している。
図5. エポキシと二酸化炭素の環化付加反応
メチル化剤に使うだけでなく、残ったリグニンの使い道まで示すとは・・・
エコかつ非凡な発想やね!(^O^)
所感
「このアイデアどうよ!」みたいな著者らの思いが伝わってくる素敵な論文。リグニンをメチル化剤として用いるだけでもびっくりアイデアであるが、さらに残ったリグニンも使おうと考えるのはすごい。
さすがにメチル化のプロセスとして有力にはなりえないとは思うけれど、脱メチル化リグニンの調製方法として結構いけてるのでは?なんとなくポテンシャルを感じる報告。
あと、発想の柔軟さがすごいと感じた。やはり研究というのは柔軟な視点でいろいろなアプローチをしなくちゃね。でも言うは易く行うは難しで、柔軟に物事を考えるって難しいよなぁ。(-_-;)
んーまー今は正月だし、難しいことはお酒飲んで忘れよー(*^q^*)
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