求核的アルミニウムから求核的金錯体へ
A nucleophilic gold complex
Nat. Chem. 2019, doi.org/10.1038/s41557-018-0198-1
Jamie Hicks, Akseli Mansikkamäki, Petra Vasko, Jose M. Goicoechea and Simon Aldridge
金って不思議
金は独特の色、物理的柔らかさ、ルイス酸性の強さなど変わった特徴を持つ元素である。
これらの性質は実は相対性理論なしに説明することはできない。その辺のことは前に書いたので、是非ご一読いただきたい(金触媒における相対論効果:色と錆びにくさとルイス酸性の意外なつながり)。
有機化学で金が出てくると、多くはソフトで強力なルイス酸として用いられている。特にアルキンを変換するときによくでてくるね。
ルイス酸がプラス的に反応すると解釈するならば、逆にマイナス的に(求核的に)反応する金試薬はあるのかというと、実はない。
しかし、ないならやったろう!というのが化学者だ。
今回は求核的な反応性を示す金錯体を合成した論文について紹介する。
求核的金錯体の合成
著者らは以前、求核的なアルミニウム錯体を報告している(参考文献1)。この論文は前に紹介したね:求核的アルミニウムアニオン登場!~ホウ素アニオンに続く典型元素の極性変換~。
これにtBu3PAuIを反応させると、アルミニウム-金結合を持った化合物が得られる。非常にシンプルな反応で合成完了。
図1. 求核的金錯体の合成
注目するべきは金の電荷で、計算によると金に-0.82の負電荷が乗っている。
つまり、この錯体は”金アニオン”ということができる。
はぇ~そんな化合物ありえるんだね。(゜o゜)
二酸化炭素に対する金の求核攻撃
この”金アニオン”に対し二酸化炭素を反応させると、狙い通り金-炭素結合を持った錯体が得られる。
図2. 求核的金錯体の二酸化炭素への付加
本当に金が求核攻撃している。。。すげぇ~!(^O^)/
所感
求核的アルミニウムアニオンを見たときに度肝を抜かれたが、このスピードでまたすごい成果に発展するんですねぇ。
いろんなものを反応させて、新しい錯体取ってくるまでならまだわかるんですが、作ったものがとんでもなく興味深い反応性示すとか・・・
ん~やはり新しい分子一発あてるのは夢がありますね。
私も新しい分子を考えよう。
今日の私のアイデアですか? scifinderで類似化合物が既知!うふふ!おっけー!!ヽ(^o^)丿☆
はぁ・・・次の分子考えますかね!
関連記事
(1) 金触媒における相対論効果:色と錆びにくさとルイス酸性の意外なつながり
(2) 求核的アルミニウムアニオン登場!~ホウ素アニオンに続く典型元素の極性変換~
参考文献
(1) Jamie Hicks, Petra Vasko, Jose M. Goicoechea & Simon Aldridge Nature 2018, 557, 92.
☆月刊化学2019年6月号(PDF)の記事になりましたヽ(^o^)丿
コメント
キンを使ってアルキンを変換とかできるんですね
なんかすごく相性いいみたいですね。アルキン特異的に作用するルイス酸といえば金触媒みたいなイメージが私にはあります。(^_^)