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有機電解反応の利点、魅力、難点。オススメ電極反応論文!

2018/02/18
 
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有機電解反応語るよ!!

有機電解に関する質問をもらう

質問箱で電解反応についての質問もらいました。

もろぴーさんに取って、有機電極反応の醍醐味、難しいところ、虜になるところはどこですか??
また、過去、最近関わらず、これに感化された!という電極反応の論文があれば教えて頂けると嬉しいです!!

電解酸化について。。。ついに来たか。。。(^_^;)

有機電解反応、なんか最近流行ってるね。
有機電解反応は1848年にコルベ酸化が報告されたように歴史はかなり長く、昔からあった手法だ。

しかし有機電解反応開発に関する論文はここ2年くらいで急に論文が増えた。
火つけはBaran先生と思われ、彼らは電解反応を用いたDixiamycin Bの全合成(参考文献1)以来、熱心に有機電極反応を開発している。そして流行に敏感な中国の化学者がその波に乗り、最近論文でちょいちょい見るようになったよね。
学生時代、有機電解反応やってたので、この流れについては言いたい事がいろいろあるが(^_^;)。。。

まー愚痴っぽくなっても仕方ない。

今回の記事では私が愛する電解反応の魅力を語ってみたい!!

 

有機電解反応の利点

有機電解反応のやってて「ここ、ええなぁ」って思うのは以下の2点!(個人的な意見ね)

・電子移動の強力さ

電極反応はかなりパワフルな酸化還元ができる。結構強力。

例えば下のようにカルバメートをメタノール中電解酸化することで、α位をダイレクトにメトキシ化することができる。他の方法を使っても結構難しい分子変換だと思う。この反応やったことあるけど、かなりきれいに進行するヨ!(^O^)


図1. 庄野酸化:カルバメートの電解酸化によるメトキシ化

庄野酸化と言われるこの反応は有機電極反応のパワフルさ示す典型例だ!!

系のクリーンさ

電極反応は電子を直接動かすので酸化剤や還元剤を必要としない。

環境的に魅力的なだけでなく、酸化剤や還元剤由来のゴミが反応を邪魔しないのが素敵。
普通の化学酸化剤や還元剤使うと、酸化還元した後の副生成物が望まない反応したりするからね。

電解反応はそういうリスクが少ないので、きれいな反応を実現できます。

 

この2点が私の思う有機電解反応の利点かなぁ~~!(^○^)

 

有機電極反応の魅力と難点

魅力はダイナミックさですね(^○^)
電子が動いてあんまり切れなそうなところが切れたり、意外なところでくっついたりする。

逆に難点は電子を動かすことしかできないことかな~(^_^;)
基本的に不器用なんよ。不斉反応とか苦手だし、配向基でどうのこうのもあんまりないし。

頑張って器用にしようとすると他の化学の力を借りる事になって、多くの場合他の酸化剤や還元剤でよくなって電気使う必要がなくなってしまいがち、、、
この辺が有機電極反応開発の難しいところですね。

 

オススメ論文

ちょっと今の流行りとは違うけど、個人的に感化されたと思う論文を紹介。

Moeller先生のオレフィンの分子内環化

オレフィンを酸化して発生したラジカルカチオン種を分子内求核部位でトラップ。続いて発生するカチオン種を別の求核剤でトラップ。二種の事なる求核剤をオレフィンに導入できる画期的反応。(参考文献2)


図2. 電解酸化によるオレフィンの分子内環化:オレフィンに異なる二種の求核剤がささる

この反応のちょっとした変形をやった事あるけど、まじ綺麗に反応が進行。

ちょーイケてる!!

千葉先生によるオレフィンのシクロブタン形成クロスカップリング

有機電解反応随一のビックリ反応!電気でシクロブタンできるんですよ!!(参考文献3)


図3. 電解シクロブタン合成:まじすげー!

反応機構も面白い!!
実はメトキシフェニル基は必須なんだ!!是非論文見てね。

菅先生のカチオン性パラジウムの発生

支持電解質で発生するカチオン性パラジウムのカウンターイオンを選べるというもの。シンプルだけど難しい変換。(参考文献4)


図4. カチオン性パラジウムの電解合成 (論文より引用)

本論文では電気化学的ワッカー酸化に応用。

 

次はあのー恐縮なんですが、、、(^_^;)

芳香族化合物へアルキルアミンを導入するアプローチ

ちゃんと設計すれば電気で芳香環のC-Hアミノ化ができますよ、というもの。(参考文献5)


図5. カチオン性中間体を経る芳香族化合物の電解アミノ化 (論文より引用)

わざわざヘテロ環を求核剤に使って、カチオン性の中間体を経るように反応を設計してあるのがポイント!

んー。どうしても私が電解反応のオススメ挙げるとマニア向けになるんだよな。(^_^;)
でもそういうのが好きなんだ、、、!
もっとコアな論文もあるんだが、興味ある方はメールでもくださいませ。

 

今がチャンス!?

有機電解反応ですが、世界的には前より増えてきたけど、日本での競技人口はどんどん減っている。

我こそはと思う方は今やってみてもいいかもしれませんよ!(^○^)

なかなかの修羅ですけどね、、、!

 

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(1) ラジカルカチオン・ラジカルアニオン・カチオン・アニオン・ラジカル:それぞれの関係性

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Comment

  1. 匿名 より:

    素人目には、電極反応でできることは全部phtoredox触媒で出来そうに見えます。(逆もまた然りですが)

    photoredox触媒と比べてここが違うっていう点はありますか?

    • moroP より:

      質問ありがとうございます。

      電子移動利用する点では出来る事がかぶるのは事実ですね。

      ただ違いはあってわりと差がある印象。

      電解は連続ニ電子移動がしやすく、photoredoxは一電子酸化で止めやすい。とか。

      まぁ、反応系の工夫次第ではありますが。

      個人的にその差であったり、それぞれ独自の価値を絞りだすのが1つのいい方向性
      だと思います。

  2. 質問箱で電解反応についての質問をさせていただいた者です。 より:

    電極酸化反応をしてみたい!と考えている有機化学初心者です!技術的な面で質問があります。このブログをきっかけに早速、庄野酸化を行ってみたいと思ったのですが、「After 3.0 F/mol of electricity was consumed…」など、どのように計算をしているのか教えて頂けないでしょうか。ガルバノスタット(あるいは電池)を使って、電流x時間で系内に流れたクーロンは計算してみました。ファラデーの法則(1 F=96,500 C)から計算するのでしょうか。。。私の基礎的な知識が欠けているのだと思うのですが、教えて頂けると嬉しいです。ご検討のほどよろしくお願い申し上げます!

  3. 質問箱で電解反応についての質問をさせていただいた者です! より:

    電極酸化反応をしてみたい!と考えている有機化学初心者です!技術的な面で質問があります。このブログをきっかけに早速、庄野酸化を行ってみたいと思ったのですが、「After 3.0 F/mol of electricity was consumed…」など、どのように計算をしているのか教えて頂けないでしょうか。ガルバノスタット(あるいは電池)を使って、電流x時間で系内に流れたクーロンは計算してみました。ファラデーの法則(1 F=96,500 C)から計算するのでしょうか。。。私の基礎的な知識が欠けているのだと思うのですが、教えて頂けると嬉しいです。ご検討のほどよろしくお願い申し上げます!

    • moroP より:

      コメントありがとうございます。
      庄野酸化いいですね!!非常にきれいに反応するのでぜひやってみてください(^O^)/

      質問の件ですが、ファラデー定数から計算しています。定電流条件ならば計算しやすく、3 F なら

      96,500×3×n(基質のモル数) = A(電流値)×t(通電時間[s]) になるようにすればいいと思います。

    • 匿名 より:

      moroP先生、F/molの計算についてどうもありがとうございました。定電流条件で計算します!電圧上昇はあまり気にせずに(上がりすぎると基質が壊れてしまうのでしょうか?)、とにかく反応が行ってくれることを祈ります。。。ホームセンターで買い集めた自作セルを使っての実験ですが、試してみます!(現状ホームセンターで購入したグラファイトを陽極、ステンレスを陰極(庄野酸化の場合、H2生成する陰極ならば素材は何でも良いのかな?と考えました)で挑戦しています!)

      FE(ファラデー効率)などパラメータが色々出てきてまだ雲をつかむような状況なのですが、少しずつ電気化学を学びたいと思います。電解アミノ化にもぜひともトライしたいと考えています!電極選びやパラメータの制御が大変そうですが…。後々はBASなどで専用の電極を購入する必要があるのかもと思っています… 繰り返しとなりますが、どうもありがとうございました!!!

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