博士は生産性が低いのだろうか?
日経新聞の記事が話題
twitterでちょっぴり話題の以下の記事
日本企業、博士使いこなせず? 採用増で生産性低下 (記事)
ちなみに初めのタイトルは「日本企業、博士採用増で生産性低下 日経センター分析」というタイトルで、これはさすがに博士を攻撃しすぎと思たのかマイルドなタイトルに変更になっている。(^_^;)
ちなみにこの記事の元ネタとなっているのが日本経済研究センターの以下の記事だ。
JCER 第4次産業革命の中の日本第4次産業革命の中の日本――研究開発は成長に役立っているか? 博士増、生産性向上に結びつかず(記事)
ざっくり元記事の内容を一言にまとめると、「博士は政策通り増えたけど、生産性は増えてないよ!博士の教育や企業の博士の使い方をもう一回考えたほうがいいんじゃねーの?」という内容。
元記事については博士の人数のグラフと労働生産性の推移を比較して「博士は倍になったけど労働生産性が上がってない!」というのは少し乱暴な意見な気がする。
博士の増加と共に比例して労働生産性向上するなんてそもそもありえないだろう、神様じゃないんだから(^_^;)てかグラフ見ると労働生産性あがっているんですが。。。
まぁこの記事自体はどうでもいいとして、博士って企業で役に立っているの?みたいなことは社会的にも興味のあるところだろう。
今回は文部科学省の中央教育審議会資料:3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料(3)を少し参考にしつつ「博士って企業でどうなん?」ってところを考えたい。
企業の満足度
そもそも企業は博士に満足しているのだろうか?
企業に向けたアンケートでは博士卒に対して8割以上が期待以上もしくは期待通りと回答しており、博士卒は学士卒や修士卒に比べても期待に応えているようだ。
文部科学省の中央教育審議会資料:3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料(3)より引用
この結果は巷でいわれているような、「博士は他と比べて頭かたくて使えねぇ~」という神話や冒頭で述べた「博士は生産性が低いねぇ~」の否定材料になりそうだ。
一方で企業側が博士にそこまで過度な期待もしていないことの表れともいえるが。
でもそんなに積極的に博士を採らない理由
就活の記事でも書いたけど、この日本において博士卒は就職で有利にならない。
実際に毎年博士課程の学生を採用している会社は5%ほどにとどまる。まったく採用しない会社は70%にもなる。博士は行くだけで100社あったら70社から足切りを食らう(^_^;)。思ったよりおおいね。
博士が期待通り働いているというのなら博士をもっと採用してくれてもいいんでないか?と思うけどそんなに積極的に博士を採らない理由も企業のアンケート結果からわかっている。
・特定分野の専門的知識を持つが、企業ではすぐには活躍できないから。
・企業内外での教育・訓練によって社内の研究者の能力を高める方が効果的だから。
文部科学省の中央教育審議会資料:3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料(3)より引用
要は専門が必要なら社内で育てたほうが手っ取り早いってことね。
ははぁ~実に日本的な考え方。終身雇用がなんだかんだ残っている日本では社内で人を育てるって考え方が根強いよね。
博士が就職活動有利にならんわけだ(^_^;)
博士課程に進学した身としてはなかなか悲しい現実。一方で企業に就職してから、この考え方は理にかなっていて、ある意味仕方ないと思う部分は多い。
優秀さは博士や修士などによらないという話
「優秀なら博士で、そうでないなら修士卒」や「博士卒はエリートの象徴」みたいに考えている人がたまにいる。博士でそう思ってるやつは多いし、驚くべきことに修士卒でそう思っている人もたまにいる。そう教育する研究室があるんだろうね。(^_^;)イミフメイ・・・
私はこれを明確に間違いだと考えている。超優秀な修士卒を何人も知っているし、全然ダメな博士も何人も頭に浮かぶ。皆もそうだと思う。
というか現実的かつ優秀な人は日本の「博士行き損」みたいな状況を正しく把握して修士卒で就職し、どうしても必要なら企業で博士を取得する。
優秀な人は会社が博士とらせてくれるんだよね。
企業に入って何年か働いてその思いは一層強くなった。同じ年の人でも三年長く会社にいる人は自分より遥かに仕事ができる。もうね、毎日申し訳なくなるレベルで(^_^;)
私の無能さはさておき、こちらが博士課程で化学だけやった三年、同じ年月社会人経験を積んでいるだもんね。そりゃぁ社会人として優秀な人多いよ。
なので専門性では博士卒のほうがいくらか分があるかもしれないが、修士卒を社内で鍛えたほうがいいっていう企業の戦略はなかなかバランスがいい選択だなぁと私は思ってしまう。
博士は企業でうまくやれているのか??
冒頭の疑問に戻るのだけど、生産性の定義は難しいので、博士が企業でうまくやれているかの評価指標を企業の満足度と考えよう。
すると現状、博士は企業の中でうまくやれていて、企業はある程度博士卒の働きに納得してくれているようだ。
決して他と比較して見劣りするわけではないらしい。なんせ専門はあるからね。
しかし一方で博士課程の採用に積極的でない会社が多いことからも、期待以上ではないことがうかがえる。
期待以上を期待されている、ちょっとハードルが高すぎる気もするがそういうことなんかなぁ。
博士課程を卒業した皆さん、博士課程にいる皆さん、これから博士課程に進学する人に迷惑かけないために「博士は生産性高いぜ!」と胸張って言えるようにお互いがんばりましょう・・・(´-ω-`)
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コメント
コースドクター、元ポスドクが沢山いる中堅化学メーカのものですが、
ドクターは当たり外れがかなり大きい気がします。当たりはとても優秀なのですが・・・
概ねはちゃんとしていますし。
ただそのせいか、社内にはドクター嫌いな人も一定数います。
私個人では、そこまではサンプル数がないのですが疑問な博士がいるのは事実(^_^;)
とはいっても修士卒でも学士卒でもそういう疑問な人はいると思うのですが、どうでしょうね?
修士や学士に比べ博士に疑問な人の割合が多いかは結構難しいところだと思うのです。
ちゃんと調べたデータとかあればわかりやすいんですけどね。(-_-)
個人的には学歴によらず、それぞれ個人の問題だと思いたいので博士だからって嫌わないでほしいんですが。。。