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開核反芳香族性非交互炭化水素:一重項ビラジカル分子の新メンバー

 
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新しい一重項ビラジカル反芳香族分子

Open-Shell and Antiaromatic Character Induced by the Highly Symmetric Geometry of the Planar Heptalene Structure: Synthesis and Characterization of a Nonalternant Isomer of Bisanthene

J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 10165-10170. doi.org/10.1021/jacs.9b04080
Akihito Konishi, Koki Horii, Daisuke Shiomi, Kazunobu Sato, Takeji Takui, Makoto Yasuda

芳香族炭化水素にもいろいろ

ベンゼンやナフタレンといった、炭素と水素だけでできた芳香環は有機化学者ならだれでもおなじみだろう。

炭素と水素だけと侮るなかれ。形によっていろいろな性質の変化がある。

大阪大学の小西先生と安田先生の論文を紹介する前に、変わった不飽和炭化水素をいくつかを紹介する。

反芳香族性

教科書にも出てくる反芳香族性。電子の数が4nである時、反芳香族性によって不安定化する。シクロブタジエンが不安定なのは非常に有名だ。またシクロオクタジエンは反芳香族性による不安定化を回避するために、非平面構造をとる。

非交互炭化水素

奇数環の入った芳香環は、非交互炭化水素と言われ、同じ炭素数でも性質が大きく異なる。例えばナフタレンは無色だが、同じ炭素数のアズレンは真っ青だ。

開核性

普通の芳香族化合物は閉殻分子だが、うまく分子設計すると開核のビラジカル性をおびる。久保先生の分子が最もわかりやすい例だろう(参考文献1)。中心のキノイド構造が、ビラジカルの共鳴構造においてベンゼン環になることが設計のポイント。

今回の論文

今回の論文は以上の三つの属性を詰め込んだ炭素と水素だけの分子の合成である。

どういうことかよくわからないよね。とりあえず、見よ!

中心の七員環が縮環したヘプタレンは12pかつ、周りの置換基によって平面構造に固定しているので、この分子は反芳香族性である。
五員環と七員環が導入されているので非交互炭化水素である。
さらに芳香族性を取り戻しつつ、反芳香族性を避けるために、Aのようなビラジカル性の寄与がある。その寄与0.72!!

属性モリモリ~ヽ(^o^)丿

 

所感

小さい分子の中に、意図みたいなものがたくさん詰まった今回の分子。こんな小さくてビラジカル性0.72ってすごくない?

こういう分子考えて、しかもちゃんと合成して、結晶とるってすごいなぁ。(゜o゜)
結構不安定そうだし、苦労もたくさんあったかもしれません。

趣旨じゃないので書かなかったけど、合成もめっちゃ綺麗。「最初の原料それ(フルオランテン)??」となるはず。是非論文見てね。

なんかこの論文を読んでいると、俺も新しい分子作りたい!って思った。ここまで難しいのはできる気がしませんが、自分なりにがんばろ。(´-ω-`)

参考文献
(1) Takashi Kubo, Akihiro Shimizu, Maki Sakamoto, Mikio Uruichi, Kyuya Yakushi, Masayoshi Nakano, Daisuke Shiomi, Kazunobu Sato, Takeji Takui, Yasushi Morita, Kazuhiro Nakasuji Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 6564.

 

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