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星(コレスポンディングオーサー/責任著者)は誰のために輝く??

 
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責任著者とは誰の事か??

ここ数年ですごく変わった??

自分と同世代の若手研究者とお話ししていると、「あいつ、ついに星付きの論文だしたな」みたいな話題が出たりする。

星、というのは論文の著者名の右上にある*のことで、その論文の責任著者であることを示している。


図1. コレスポンディングオーサーの*、これのことね。(Chem. Commin. 2019, doi:10.1039/C9CC04012Aより引用)

若手の研究者に*がつく場合は、その研究がその若手研究者のアイデアであり、主として研究を進めてきた一つの信用になる。つまり、上記の会話の内容は要するに、「あいつ、自分オリジナルの研究を論文に発表したな」という風に翻訳することができる。

ただ、この感覚は私の学生の時、一般的ではなかったと思う。少なくとも私の周りでは、助教の先生方に*がついているケースは非常に少なかった。当然、京大の先生方だからね。自身のアイデアを出して研究している先生が多いだろうが、今考えると不思議なことに、驚くほど*が助教の先生についている論文は少なかった。

この状況をわかりやすくいうと、「アイデアが助教由来であろうが、組織の長は教授で教授の旗の元の成果なんだから、この論文は教授の成果ね!」ってこと。自分のアイデアの研究成果であったとしても、その論文が海外の人から引用されるとき、「@@(教授の名前) and coworkers」にされてしまうだろう。つまり、助教の名前は認識されないってこと。

ひどい話だよね。個人的には、講座制の制度を悪用した、成果の搾取だと思っている。

京大に限らず、多くの大学はそういうシステムだったのではなかろうか?

この流れが、すこ~し変わってきたのは私が博士課程を卒業するちょっと前の2015年あたりだろうか??(もっと前か?正確なことはわからない)

若手の勢いのあるPIが主催する研究室が、助教に*つけるケースが増えてきた。それと同時に学生に筆頭著者を譲るケースも増えてきた。確かに*をもらえたら、助教がわざわざ筆頭著者になる必要もないのかもしれない。

僕は学生時代、第一稿を自分で書かずに筆頭著者にしてもらっている他大学の同期に心底びっくりしたこともあったけれど、どうも学振の書類を後押しする意図があるようだ。「それってどうなの?ずるい!」っと思ったこともあるが、明確に若手を支援しようというPIの意思を感じて、少し妬ましくもあった。

 

広がる著者格差

話がそれてしまった。

僕が今一番やばいなぁと思う問題は、*の基準が個人個人にゆだねられ、研究室によって大きく方針が違うということだ。

ある研究室では、研究費を自分でとってきて、自分のアイデアを、自分主導で成果にしても、*はつかない。一方の研究室では、コンセプトは明らかなボスの延長線上でも、テーマを発案すると*がつく。

でありながら、助教から次のステップへ進むとき、同じ尺度で成果を測られてしまう。*付きの論文の数が審査基準のいくらか含まれることは、想像に難くない(少なくとも、*を助教につける研究室の教授はそういうところを見るだろう)。

また、海外からの目はもっとシビアだ。絶対に*ついてない奴なんて認識しない。自分が論文読むときもそうだし、仕方ない。悪いのは*がついていない自分だ。

昔は、どの研究室も教授にしか*がつかなかったので、日本の中ではある種の公平さはあった(いいか悪いかはおいておく)。海外の人でも、理解ある人ならJapanese cultureとして認めてくれたかもしれない(たぶんないけど)。

でも今は、助教に*をつける研究室が一定数以上でてきたので、所属する組織による不公平が生じる著者格差が凄まじく大きいのではなかろうか??

 

星は誰のために輝く?

残念ながら、若手がいくら不満に思おうと、上からこの歪みが正されることはないだろう。少なくとも今助教している人が助教の間に正されることはたぶんない、もれなく任期があるからね(^q^)。

「*はほしいけれど、まぁ、若手の間は耐える期間・・・」とあきらめてる人もいるかもね。

でも、いいんだろうか。coworkerになるためにアカデミアにいるわけじゃないだろうに。

もっと言うと、あなたが納得すると、下の世代がきっと迷惑被るわけだが。負の連鎖まわしてく?

僕がいいたいのは、自分が責任著者にふさわしい仕事をして、論文として発表するとき、どうか*を巡って上と戦ってほしい。

戦って*を勝ち取ってほしい。しんどいだろうけどね。

負けたらどうするって?

ん~そうだなぁ~・・・ よし!twitterで晒してやれ!\(^o^)/

 

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