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女子高生と学ぶ芳香族性・反芳香族性・非芳香族性の見分け方と定義!

2021/11/18
 
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芳香族性の分類問題を解けるようになろう

勇樹 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち

理香
そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。

芳香族性・反芳香族性・非芳香族性の定義

勇樹

今まで何気なく書いていたベンゼン。

実はベンゼンは”芳香族性“を持つという点において、有機化学において非常に重要な分子だ。

そういえば”芳香族性“ってなんなんですか??

芳香族化合物は言葉として聞くけど、芳香族性についてはあんましわかんないというか・・・

勇樹 よし!今日は芳香族性・反芳香族性・非芳香族性を簡単に説明して、見分けられるようになろうか!

芳香族性

芳香族性分子の基本的な定義は「(4n+2)個のπ電子が環状かつ平面でつながっている」と定義されている。二重結合一つにつき2個のπ電子を持つので、ベンゼンは6個のπ電子を持っている。さらに、それらが、環状かつ平面につながっているので、ベンゼンは芳香族性を持つ典型的な分子といえる。


図1. ベンゼンは6個のπ電子を持ち、芳香族性を持つ

芳香族性持ってると、なんか違うんですか??
勇樹

芳香族性を持った分子は非常に安定になる!実際に、環でつながっておらず芳香族性を持たないシクロヘキサトリエンと比較すると、ベンゼンは非常に安定なことが知られている。

このため芳香族性分子は特異な反応性や物性を示すことがある。なので芳香族性は有機化学において非常に重要な概念になるわけだ。

 

反芳香族性

反芳香族性分子の基本的な定義は「4n個のπ電子が環状かつ平面でつながっている」と定義されている。シクロブタジエンは4個のπ電子の反芳香族性分子の典型だ。反芳香族性分子は非常に不安定になる。


図2. シクロブタジエンは反芳香族性分子

勇樹 実際に、無置換のシクロブタジエンは不安定すぎて、存在することのできない分子なんだ。
こんな普通そうな分子がですか!?
勇樹 そうなんだ。安定に存在できる反芳香族性分子は非常に珍しい。いかに反芳香族性が分子を不安定化するかわかるだろう。

非芳香族性

非芳香族性分子はシンプルに、芳香族性も反芳香族性もない分子。一般的な分子だ。安定でも不安定でもない。よく言葉の間違いとして、反芳香族性と非芳香族性をごっちゃにしてしまうことがあるので気を付けよう。

勇樹 あと、間違いやすい例を一つ解説しておこう。このシクロオクタテトラエンは芳香族性・反芳香族性・非芳香族性のどれになるだろう??

二重結合が4つだから、8個のπ電子で反芳香族性じゃないですか??
勇樹 ・・・というのが実は不正解になるんだ!
え!?なんで??

反芳香族性は不安定になることは、さっきいったよね。で、ならずに済むなら分子はわざわざ不安定になりにいかない。つまり反芳香族性はできるだけ回避しようとするんだ。実際に、シクロオクタテトラエンは下のように歪むことによって、「4n個のπ電子が環状かつ平面でつながっている」の”平面“を逸脱することによって、反芳香族性になることを回避する。結果、シクロオクタテトラエンは非芳香族性分子に分類される。


図3. シクロオクタテトラエンは非芳香族性分子

えぇ~!そんなんわかるわけないじゃないですか!
勇樹 まぁ、これは初見殺しなところあるので、覚えておこう!

 

いろいろな化合物を分類してみよう

基本はわかったと思うけど、この単元で大事なのは”ある化合物が芳香族性か、反芳香族性か、非芳香族性分子かを、自分で分類できるようになること”なんだよね。定期テストはもちろん、院試にもよく出てくる。

高校ではでないんじゃ・・・
勇樹 以下の分子を分類してみよう!解答と簡単な解説は下にあるよ!
聞いて・・・!

問題(解答は下へ!)

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解答

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Comment

  1. てけてけ より:

    反芳香族の定義の部分が、
    「芳香族性分子の基本的な定義は「4n個のπ電子が環状かつ平面でつながっている」と定義されている。」
    がなっているのですが、これは、反芳香族の定義ではないのでしょうか?

  2. ひーくん より:

    最高ですこのシリーズ。大学で学んでる有機化学が分からなさすぎて検索してたらたどり着きました
    わかるとモチベになります!

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