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研究の細分化と多様化の成れの果て ~燃やしているやつ、まぁ読め~

 
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今回はちょっと難しい話

ひどい誤解

私がごくごく一部の人に話すことがある。

・研究って細分化して多様化していて、もうほんのわずかにずれるだけで、お互いのことがわからないよ。
・でもわからないことに気が付いている人は少ないよ

この二点だ。このことを伝えようとするとどうしても、偉そうになっちゃうんであんまり多くの人にはしなかった話だ。でもこれを如実に表す事件が私の周りで起こった。

この論文が世に立たことがきっかけだ。

Identification of Bond‐Weakening Spirosilane Catalyst for Photoredox α‐C−H Alkylation of Alcohols


金井研究室HPより引用

で、この研究が私がクラウドファンディングで提案した研究のパクリと、ごく一部でいわれているらしい。

でも結論言うと、全然違う研究だから!!(そもそも、こちらの研究が早くから行われていたという可能性すらある)。

生長先生と金井先生の研究は、ケイ素がC-H結合を弱くする触媒として用いる。
私の提案した研究は、ケイ素化合物自身をラジカル前駆体とする。

それに反応形式からケイ素の使い方が全く別!しかもケイ素の骨格自身はすげー古くから知られている有名な分子だから!

「なんか同じケイ素骨格使ってるし、光反応だし、ラジカル反応だし似てるじゃん!」っと思った人もいるかもね。まぁ、思うまでは別にかまわない。

でもさ、あんまり詳しくないなら思うだけにしときなって。本当に問題と思うなら、僕にDMかメールすればいいじゃん。twitterという公共の場で直接非難している人も見かけたし、非難をほのめかすような人は結構多かったよ。

実験した学生もいるんだよ?その人が傷つかないと思うのかな?

いますぐ非難したり、それをほのめかすtweetを消しましょう。で、猛省してください。

 

この問題は結構やばい

今回の問題は、「詳しくない人が誤解した」ですますことができればいいんだけど、そうは言えないのがやばいんだよね。

非難をほのめかす人の中に、”有機化学の専門家”といっていい肩書の人がうじゃうじゃいたんだよ。

まじやばいって。

論文大して読まずに、グラフィカルアブストラクトを数秒見て、「これ、一緒だ!」って判断した人が少なくないってことなんだよ。まぁ人間だからね、誤解することはある。でも専門家の自負があるなら twitter で非難する前に論文読めよ、と切に思う。

 

なぜこんなことに?

今回のひどい事件は、最初に挙げた

・研究って細分化して多様化していて、もうほんのわずかにずれるだけで、お互いのことがわからないよ。
・でもわからないことに気が付いている人は少ないよ

この二点を如実に反映している。

一般的に専門家といわれる人が、ぱっと見た分子構造で同じと判断しちゃって、本質がわかっていないことに無自覚なんですよね。。。その結果、傷ついている人がでてきていますからね。ホントまずい状況です。(もちろんわかっていて静観していた人も多いでしょう。そのひとにとって今回の記事はエライお目汚しでした。ごめんなさい。)

僕らは研究が細分化・多様化していることを自覚して、隣の研究分野はわからないという謙虚さが大事なのかなぁ、と思った次第。

とはいえ

完全に僕らの研究室しか今は使わないっしょ~って分子を巧みに利用した反応が報告されたのは事実。

ぼやぼやしていると、どこからか本当に全く同じ研究が出てきちゃうかもしれません。学生と一緒に、より一層精進して早く成果を発表できるようにがんばります~

 

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