卒論発表・修論発表要旨を書く上で守るべきこと
卒業論文の季節になってきた
理系の学部四年生や修士二年生はそろそろ卒業が見えてきましたね。実験の進捗はいかがでしょうか?
データなくて死にそうな人も、いい結果山盛りな人も、最後のひと踏ん張りで頑張ってください。(^O^)/
私も現在、学部四年生の卒論発表要旨をチェックしているわけだけど、よくある気になった点をリスト化しようかと思います。
来年から学生に「とりあえず、このページを見よ」と言って楽しちゃうぞー☆、って作戦です。
これから卒論発表や修論発表の要旨作る学生の方の参考になれば幸いです。なお、この記事は毎年パワーアップする予定!
要旨作成の進め方
そもそも書く前の話ですが、誰にも相談せずいきなり要旨を書いてしまうのはあまりお勧めしない。
なぜかというと、「こんなん全然ダメや!!やり直し!!」のリスクが無駄に高まる。特に四年生の場合、要旨作成はじめての人も多いでしょうから、なおさら指導教員に相談すべき。
とは言っても、何にも考えずに指導教員に、要旨の内容を投げるのは無責任だ。
私のおすすめの要旨作成の進め方は
A4の紙に手書きでどこに何書くかを示すアウトラインを書いて、要旨を実際に作る前に”一番近しい指導教員(助教とか)と30分から1時間打ち合わせする。
というものだ。イメージはこんな感じ。
ポイントは以下の三点。
①背景で書く要素を箇条書き。
②実験項で書く要素を箇条書き。
③絵は手書きで指導教員に伝わる程度でよい。
この程度で十分「どんな感じの要旨を書くか」を指導教員と共有することができる。
これをもとに指導教員と打ち合わせすれば、足りない要素、不要な要素、図をどのように書くべきかを指摘してくれるだろう。なので実際に要旨を書いたとき、指導教員からの「全然違うじゃねーか!」リスクを大幅に減らすことができる。
この事前の打ち合わせは、手間が増えるようで、絶対に要旨作成にかかる時間を減らすはず。ぜひぜひやりましょう。
要旨書く上で守るべきこと
あとは細かい点も含め、気を付ける点を列挙。
( )の場所
× ~を反応させた。(式1)その結果~
〇 ~を反応させた(式1)。その結果~
これは割とある間違いで、知らないとどうしようもない。( )で図や式を示す場合は句読点の前に置きましょう。
この辺、いちいち指導教員に直させるのはやめましょう。
引用番号の場所
× ~という化合物が知られている。1)
〇 ~という化合物が知られている1)。
上付きの数字で示す引用番号も、先ほどの例と同様、句読点の前に配置する。
意味が不透明な表現
× ~な構造を持つ化合物はとても珍しく、よくわかっていない。
〇 ~な構造を持つ化合物は過去に一例しか報告されておらず、反応性については明らかになっていない。
これはかなり難しい。私もいまだ自信なくて気を付けている。
科学的に物事を書くには、客観的かつ明瞭に記述しなければならない。上のよくない例で言うと、
「珍しく」→ どの程度?
「よくわかっていない」→ 何が?
など突っ込みどころがある。気を付けないと、つい意味が不透明なふわっとした表現になるので、できる限り気を付けてみよう。
文字や図が小さい
いっぱい情報を詰め込みたいからって小さな文字を使うのはやめましょう。先生のなかには、小さい文字を見るのがつらい方がいらっしゃる(少なくない割合で)。図も同様で、頑張って大きくしよう。
ぜひぜひ教授フレンドリーな要旨にしましょう。
統一感
半角、全角、大文字、小文字は特に理由ない限り統一しましょう。
× 1995年に報告された5配位Silicate化合物は、photoredox触媒により~
〇 1995年に報告された5配位silicate化合物は、photoredox触媒により~ (数字を半角で統一、英単語小文字で統一。)
また、図の縮尺もできる限りそろえましょう。
単位の前のスペース
× 120℃で6h反応させると、90 %で目的の化合物が得られた。
〇 120 ℃で6 h反応させると、90%で目的の化合物が得られた。
単位の前には半角スペースを入れる。ただし%は単位でないのでスペースは不要。知らないと必ず間違えるので覚えておきましょう!
注:国際単位系(SI)によると「%の前にスペースを入れろ」、とのこと。しかし論文等では、スペースを入れないのが現状一般的のようだ。指導教員の方針に従ってください。
表現の重複は避ける
同じ表現は繰り返さない方がよい。同じ表現を連発すると、なんとなく陳腐な印象になる。うまいこといいかえて重複は避けましょう。
×アルコール1を合成した。
次にアルデヒド2を合成した。
さらに@と反応させ、エステル3を合成した。
↓
〇アルコール1を合成した。
次にアルデヒド2へ変換した。
さらに@と反応させ、エステル3を得た。
引用の書式を守る
引用は分野や研究室によって書式が異なる。ただ、ちゃんとした書類を作るなら、書式は統一せねばならない。
うちの研究室はACSの引用スタイルを推奨している。
(例)Morofuji, T.; Shimizu, A.; Yoshida, J. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 9816.
[. , ; 太字 斜字 スペース] など細かく規定されているので、指導教員にどう書くべきか尋ねて、その書式を寸分違わず守りましょう。
有機化学の分野の人は気を付けるべきこと
有機化学分野独特の慣例も紹介。
化合物番号の打ち方
正式名称ならば( )ありで、慣用名なら( )なしの太字の数字で化合物番号を表す。
×: 2-アミノナフタレン1 , アセトフェノン誘導体(2), アルコール(3)
〇:2-アミノナフタレン(1) , アセトフェノン誘導体2, アルコール3
なんで?と思うけど理屈ではない。従いましょう。
この記事の加筆内容募集
さて今のところはこんなものか。でも他にもいろいろあると思うんだよね。そういった注意事項をみなで共有できればすごくいいと思うんだ!
なので「こんなことも気を付けたほうがいいよ!」ということがございましたら、コメントやメールくださいませ。
喜んで加筆します!ヽ(^o^)丿
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コメント
参考文献の付け方や図の表し方も詳しく教えていただきたいです
ありがとうございます!参考文献は研究室によって違うと思うのですが、一般的なことを追加しました。
図の表し方といいますと、どういったことを指しているでしょうか?