Stereospecific Allylic Functionalization: The Reactions of Allylboronate Complexes with Electrophiles
J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 15324.
Cristina García-Ruiz, Jack L.-Y. Chen, Christopher Sandford, Kathryn Feeney, Paula Lorenzo, Guillaume Berionni, Herbert Mayr, and Varinder K. Aggarwal
要注目研究室のAggarwal研
彼らの研究は独特だ。
古くから知られている、ホウ素の化学を追求し、もう完成していそうな分野で新しい現象を見つけ続ける。
論文読むたびに「あ、それ今までなかったの?なかったのにできたの?すげー、、、」となってしまいます。
ハイレベルなジャーナルに論文をバンバン出し続けているわけだけど、普通そういう化学は後追いされて競技人口が非常に増えるものだ。
C-H官能基化とか有機触媒、可視光光触媒反応とかはその典型例だろう。
しかし彼らの研究は後追いがほとんどいない。
後を追おうにも追いようがない。彼らはこの分野において先に行き過ぎており、誰も背中すらとらえられていないのだ。。。
この辺のボレート化学の異常な深さみたいな話は別の機会にするとして、今日は彼らの新しい論文についてみてみよう。
著者らは前にアルキルボレート錯体が立体反転をしながら求電子剤と反応する(SE2inv)ことを報告している。
この知見を活かして、本報ではアリルボレート錯体の立体特異的なSE2’反応を報告している。
反応のアウトラインはご覧の通り以下の二段階からなる。
図1. 反応のアウトライン。すっごく基本的な反応で今までなかったことが不安になる。
1)アリルボロン酸エステルへ有機リチウム種を反応させボレートへ活性化
2)求電子剤の立体特異的な反応。
二段階の反応。シンプルで今までなかったのか心配になるような反応。
こういった反応見つけて開発するのは本当にすごいですよね。
肝心の基質適用範囲はぜひ論文のテーブルを見てほしい。
おぉ。。。すごいわ
1) オレフィンの立体選択的
2) γ位選択的
3) 四級不斉炭素構築
4) 原料が安定かつ立体選択的合成が用意
5) C, N , F, CF3,Sと幅広い求電子剤が導入可能
数え役満かな?
また著者らは反応開発をするだけでなく、さらに「反応性の物差し職人」ことMayrらと一緒に今回のボレート錯体の反応性を見積もっている。
その結果、アリルホウ素をアリールリチウム種でボレートへ活性化することで、狙い通り反応性があげることができていることを定量的に示している。
ボレートにすることで反応性が上がることは半ば常識に思えるが、どの程度反応性が上がったかはなかなか議論することが難しい。
今回の反応性の議論もカチオンやアニオンを研究する人にとって重要なデータとなるだろう。
いやー今回もいい反応ですねぇ~
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