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アセトニトリルと水の混合は吸熱反応でメタノールと水は発熱反応な話

 
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溶媒を混ぜると温度が上がる?下がる?

Non-ideality of binary mixtures Water-methanol and water-acetonitrile from the viewpoint of clustering structure

J. Chem. Soc., Faraday Trans., 1998,94, 369-374
Akihiro Wakisaka, Hassan Abdoul-Carime, Yoshitaka Yamamoto and Yoshimichi Kiyozumi

学生時代からの疑問

学生の時、ずっと不思議に思っていたことがあった。できる環境があれば是非実験してほしい。ビーカーで混ぜるだけだ。

・室温のアセトニトリルと同量の水を混ぜる。ほんのり冷たくなる。
・室温のメタノールと同量の水を混ぜる。ほんのり暖かくなる。

つまり、アセトニトリルと水の混合は吸熱反応で、メタノールと水の混合は発熱反応というわけだ。同じ水と極性有機溶媒の混合にもかかわらず、なぜこんな違いが生まれるのだろう??

この夏休みの自由研究として、この原因について調べてみることにした。すると実験的にこの現象を説明する論文が産総研の脇坂先生から報告されていることがわかった。

なお本論文は物理化学的な内容で、私もフォローできていない部分多いし、細かく説明すると非常に長くなるので、気になる人はぜひ原文を読んでみてください(^O^)/

 

そもそも理想的な液体を考えるならば

理想的な液体A、Bがあったとしよう。

実はAとBを混ぜると、発熱も吸熱もしない。A-A、B-B、A-Bの各相互作用の強さは一定で熱の出入りがないからだ。

逆に現実の溶媒はA-A、B-B、A-Bの各相互作用の強さが異なるため、混合後の各相互作用のバランスで吸熱や発熱が起きる。

では、アセトニトリルやメタノールは自分自身や水と、どう相互作用しているのだろうか?

 

アセトニトリルと水の混合

純粋なアセトニトリルのみを質量分析したものを図1に示す。双極子-双極子相互作用により、アセトニトリルのクラスターにあたるピークが検出された。


図1. アセトニトリルのマススペクトル。数字はクラスターを構成するアセトニトリルの数を表す。(論文より引用)

これに水を少量加えると、アセトニトリルのクラスターが壊れ、小さな水-アセトニトリル付加体しか検出されなかった。


図2. アセトニトリルに水を加えたときのマススペクトル。数字はクラスターを構成するアセトニトリルの数と水のを表す。(論文より引用)

つまり、水はアセトニトリルの双極子-双極子相互作用によるネットワークをバラバラにしていることが示唆される。

この過程は熱的には不利だが、エントロピー的に有利になるため、吸熱反応が進行したと理解することができる。

 

メタノールと水の混合

純粋なメタノールを測定すると、図3(a)のようにメタノールの4量体以上はほとんど観測されなかった。ところが少量の水をメタノールに加えたものを測定すると図3(b)のように8量体のような大きなクラスターを組んでいるであろうピークが観測された。


図3. メタノールのマススペクトル:(a)水なし、4量体以上は存在しない。(b)水あり。8量体も観測 (論文より引用)

つまり、メタノールは水が存在すると、大きなクラスターを形成していく、ということになる。

すなわちメタノールは水と混合すると、水素結合の数が増えて安定化するので、発熱すると理解することができる。

 

所感

学生時代からの疑問であったが、調べてみるとやはりすでに調べられているものですね。

水酸基の有無によって、水との相互作用の仕方が変わり、吸熱反応と発熱反応に分かれるようだ。

何にでも理由があるものですねぇ~(^O^)

注意点として、今回はいつも以上に内容かなり端折ってます。より精密な議論を見たい方はぜひ原文をご覧下さいませ。あと勘違いがあれば、こっそり教えてね。

 

 

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