有機化学のブログ:面白い最新論文解説したり、有名反応をまとめたり、入門向け記事書いたり。

研究者のしゃべり場イベントレポート:背景・集客・内容・感想・反省など

 
この記事を書いている人 - WRITER -

初めてのイベント開催で感じたことなど

そもそもなぜこんなイベントしようかと思ったかというと

いい研究って何か?、これは非常に大事な問題に思える。学生のころから、ず~っと心に引っかかっていた問題だ。

もし、いろんな人と議論して、みんなが納得できる答えを目指したら、どういう結論に落ち着くんだろう?

このふとした思いつきを確かめるため、イベントを開催し、いろんな背景の研究者を集めることにした。→募集要項

 

集客

集客はほぼほぼtwitterでこちらからお声をかけさせていただいた。普段のtweetから、研究に関していろいろ考えがありそうと感じた人に声をかけた。

この時注意したのは、様々な背景の人に集まってもらうこと。

アカデミアの人間だけでも、企業の人間だけでも、議論が偏ってチープになってしまいそうだからだ。

で、実際にいろいろな背景の研究者にtwitterで突然声をかけたところ、7人中6人から参加していただける返事をいただいた。

この参加率の高さは偶然もあるだろうが、新しい正体のわからないものに対し、興味だけで突っ込める生粋の研究者なのだな、と感じた。すごいなぁ、この人たちなら仲良くなれそう、なんて思ったり。

そんなこんなで、普通に募集を始める前に、ほとんど事前募集でメンバーがそろってしまった。

で、あとは1人くらい誰か来てくれたらおもしろいなぁ、と思って参加募集の記事をアップすると、修士の学生が一人名乗り上げてくれた。

すごい。私が言うのもあれだが、よくこんなわけのわからんものに自分から参加してくれた。(^_^;)
こういうフットワークの軽さは本当に重要だと思う。なんでもノリだよね。

そうして集まった私を除く参加者は7人。
修士1、博士2、ポスドク1、助教1、企業研究員2

非常にバリエーション豊かな背景のメンバーがそろった。

 

イベントデザイン

メンバーがそろうと、議論の仕方を考えた。普通に話し合うだけでは、一つの結論になかなか収束しないだろう。

なので向かうべき結論のフォーマットを規定した。

いい研究の条件を三つに絞るというやつだ。

で、何を材料に三つに絞るの?という話になるので、議論材料は事前に「いい研究のキーワードを三つ考えてきください」という宿題とした。

このふわっとした聞き方で、幅広い意見が挙がりつつ、議論の材料は参加者の人数×3=21個に制限できるので、議論が発散しにくいだろうと思ったのだ。

21個のキーワードのうちグルーピングできる内容をまとめ、最終的にいい研究の条件を3つに絞る。
うむ、これなら発散せずゴールできそうだ。

あと、秘めたる目標として「参加者同士が今回だけの関係で終わらないように親交を深めること」を掲げた。

せっかくおもしろそうなメンバーが集まるのだから、末永く続ける関係のきっかけになれば、どんな内容だろうとそのイベントは成功だと思うからね。

 

イベントが始まるまで

集合は14時40分、駅前。

時間通りに続々と参加者が集まってきたわけだが、やはりtwitterのつぶやきから想像した雰囲気とは違う。
「あぁ~、あなたが@@さんですか!?」が止まらない。きっと私もそうだったろう。

駅前から会場へ移動する道のりは、皆どこかぎこちない。みんな、初めまして同士だからね、仕方ない。

会場につくと、事前に考えてきてもらっていたそれぞれの「いい研究のキーワード」を黒板に書いてもらった。

     

あれぇ~?思ったよりかぶらないというか、意見が違うもんですね・・・(^_^;)

でここから、イベントスタート。

 

イベントは三部構成

イベントは以下の三部で構成した。ちなみに私は今回聞き役・進行に回り議論に参加しなかった。

①自分のキーワードの説明

各自10分親になり、他の参加者に自分のキーワードの内容を説明する。他の人は子であり、親に質問をぶつける。

第一部の議論には以下のようなルールがある。
・子は原則、親の発言内容の否定は禁止。
・子は事前にトランプを引く。エースを引いた子は必ず、最初に質問しなければならない。
その後は自由に議論するが、議論が止まった時は2を引いた子が、次に止まった時は3を引いた子が質問しなければならない。
・キングを引いた子は、議論の最中、一度だけ否定的な質問をしなければならない。

といった感じで、誰が発言する人かある程度明確にした。

お互い慣れてないだろうし、そのほうが発言しやすいと思ったからだ。またあえて嫌な質問する人を役割として決めてしまい、議論にスパイスを足そうとした。これは悪くない試みだったと思う。

このような流れで、それぞれの言い分を共有し、21個のキーワードが出た。

この際トップバッターのみずさんが「そもそも三つに絞るのは無理だと思うが・・・」という発言から始まったのが、印象的だった。

私も感じてた(^_^;)。参加者みんなそうだったかもね・・・

②キーワードをまとめ、いい研究の条件を三つにしぼり明文化する

第一部の後、休憩ということでケーキとシャンパンを出しました。
休憩の間、参加者間で盛んに会話されていたので、だいぶ打ち解けた模様。よかった。

休憩の後は第二部。挙げられた21個のキーワードを3つにまとめるというフェイズだ。

予定の時間は45分、いけるのか・・・??

参加者全員でまとめられるキーワードをグルーピングしていく。
第二部は完全フリートーク制。参加者同士慣れてきたこともあってか、スムーズに議論が進む。

すると今回挙がったキーワードは内容・結果・手段のいずれかにまとめられそうなことがわかった。
やる前はまとめるのが絶望的に思えたけど、ここまでかなりスムーズで驚いた。みなさん頭いいわ。

そしてそれぞれについて、参加者のキーワードを包括するように言葉にした三条件は以下の通り。

・伸びしろの大きい研究
・倫理観を伴い、利用価値を産む研究
・他者または自分が納得できる魅力をもつ研究

この結論は私自身かなり興味深く思っている。広さと明確さを両立しつつ、何より一人で考えていては絶対出ないような偏りの少ない定義になっている。→ 詳しくは結論の記事で

だが一方でずいぶん実行が難しい定義になった。

参加者の一人であるノブさんは「みなさん、こんなハードルの高いこといって大丈夫か?」と言っていました。

確かに。まぁー、言うことは大きくいきましょう。笑

③どうすればいい研究できるのか?についての議論

せっかくいい研究の条件がわかったのだから、どうすればこの定義に則した研究ができるのか30分ほど真剣に話し合いました。

議論の内容は前の記事見てもらうとして、第三部で印象に残ったのは”参加者の建設的な姿勢”なんですよね

次々に出てくる意見に対し、否定するのでなく、「こういった見方もあるよ」「これも大事かも」「これはどう考える?」みたいな建設的な議論がガンガン進むんですよね。

なんか、こういう姿勢そのものがいい研究するために一番必要だったりするのかなぁ、なんて思いながら進行させていただいておりました。

この第三部で話し合ってるころは、イベント初めの硬さは微塵もなく、だいぶ打ち解けて終始いい雰囲気で議論が進みました。

単純にめちゃ楽しかったです。

 

以上のような感じでイベントは進み、時間は押しに押して、15時に始まって終わったのは19時前。
四時間くらい議論したのかぁ。すごいな。

 

飲み会

議論終了後は飲み会。

かなり砕けた空気で相当面白かった。8人いて5人博士持ち、2人博士課程という異常な空間に一人いた修士のTさんは、全方位から博士進学を進められていました。笑

酔ってたのもあるけど、あのモチベーションの高さなら、進学進める皆の気持ちはわかる。(というか私もだいぶ推した(^_^;))

二次会・三次会を経てお開き。

結構のんだねぇ~

 

感想

イベントなるものを初めて開催する立場で参加したんですが、開催すること自体がいろいろ勉強なりました。

結局、人ですね。人。

素敵な人を集めることさえできれば、イベント内容も主催者の意図以上のものになりますし、参加者同士の交流にすごい価値が生まれることを実感しました。

事後アンケートを取ったところ、皆さまおおむね楽しんでいただけたようで、よかったです。

反省点はいろいろあるので、それを活かしてまたなにかできたらいいなぁ、と思ってます。

今回スルーしたあなたも次は参加してみてね☆(^O^)/

 

外部サイト
1) 良い研究とは何か語り合ってきた : 参加者であるノブさんのオフレポ記事。あわせてどうぞ。

関連記事
1) 有機化学論文研究所一周年企画:「研究者のしゃべり場」参加者募集!~いい研究って何??~ : 今回の募集要項
2) いい研究とは何か?いろいろな背景の研究者と一緒に議論してみる : 今回の結論

 

 

sponsored link
この記事を書いている人 - WRITER -

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Copyright© 有機化学論文研究所 , 2018 All Rights Reserved.