女子高生でもわかるSN1反応!カルボカチオンの安定性に寄与する超共役・共役・共鳴

      2018/06/03

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SN1反応:カルボカチオン種の求核置換反応

勇樹 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち
理香 そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。

 ハロゲン化アルキルの変換法:求核置換反応、今回はSN1反応

勇樹 前回三級ハロゲン化アルキルはSN2反応が進行しない事を説明した。
ハロゲンの裏が混んでいて求核剤が近づけないんだよね!
勇樹 でもこんな反応は起こるんだ。
は!?イミフ!!起きないっていったじゃん!!
勇樹 SN2反応は起きない、、、だがSN1反応は起きるんだよ!!
なにそれ!?何が違うの!??
勇樹 反応機構が全然違うんだ。

この求核置換反応はSN1反応と呼ばれる。

 

炭素カチオン種を経由するSN1反応

SN1反応は求核置換反応の一種で、炭素カチオン種を経由する反応の事を指す。
次の二段階で反応が進むことが特徴。

1. 脱離基が酸によって活性化されて外れる。その結果カルボカチオン中間体が発生する。
2. カルボカチオン中間体が求核剤と反応する。カルボカチオンは平面なのでどちら側からでも反応できる。


図1. SN1反応の概要

カルボカチオン中間体??なにそれイミフなんですけど!
勇樹 カルボカチオン中間体は酸によって脱離基が無理やり外されて発生する、非常に反応性が高い中間体。

普通の炭素は手が4つあるけど、カルボカチオン中間体は手が3つ。足りないひとつがそのままプラスになっている。
よって強烈にマイナス成分(求核剤)と反応しようとする。

炭素の手が3つ!?そんなのあんの!?
勇樹 極めて不安定だが確かにあるんだ。
ただカルボカチオン中間体はほとんどの場合あまりにも反応性が高いので、普通は試薬瓶に溜めるなんてことはできない。
あくまで反応溶液内でちょっとずつ一瞬だけ発生するものだ。
なんでそんな溜められないものがあるっていえんの??
勇樹 いい着眼だね!”普通は溜められない”ってのがポイント。

結構昔本当にカルボカチオンがあるかどうかは研究者の間でも議論になったんだけど、Olah先生という超偉大な先生がMagic Acidという酸を用いればカルボカチオンを溜められることを発見し、実際にカルボカチオンが存在することを証明した。
ちなみにOlah 先生はこの業績でノーベル賞を受賞している。

Magic Acidって名前がなんとなくラノベみたいと思ったら、それがノーベル賞なんて・・
勇樹 この機構ならSN2反応と違って、三級ハロゲン化アルキルでも求核置換反応が起きることも納得できるだろう。

てか、むしろ三級ハロゲン化アルキルの方が反応しやすい。

え!?三級のほうが反応しやすいの!?なんでだろ・・・
勇樹 それはカルボカチオンの安定性によるものだ。

 

カルボカチオンの安定性

SN1反応は不安定かつ高活性なカルボカチオンの発生が鍵だ。
カルボカチオンは非常に反応性が高いので発生さえすれば、すみやかに反応が進行する。

つまり一番大変な”カルボカチオン中間体の発生”さえできればSN1反応は起きる。
このとき当然、不安定なカチオンを発生させるより安定なカチオンを発生させるほうが楽だ。

そのためSN1反応はカルボカチオンが発生しやすいように”比較的安定なカルボカチオン”が発生するハロゲン化アルキルで起こりやすい。


図3. カルボカチオン中間体の安定性が反応の起きやすさに関与する。安定なカチオンほど発生が楽。

 

カルボカチオンの安定性に寄与するもの

カルボカチオンは”隣に何があるか”によって安定性が全く異なる。
カルボカチオンの安定性に寄与するものとして次の三種類が代表的だ。

1. 超共役

カルボカチオンは三つの手の平面に垂直になるような形をしている。

この時カルボカチオンの隣の炭素ー水素結合がカチオンに電子を少し与えるようにして安定化する。このような安定化を超共役という。


図4. 超共役によるカルボカチオンの安定化

このためアルキル鎖からなるカルボカチオンは

一級<二級<三級 の順で安定になっていく。

2. 炭素-炭素多重結合の共役

炭素ー炭素二重や三重結合は隣のカチオンに電子を少し与えるようにして安定化する。このためアリル位やベンジル位のカルボカチオンは安定化される。これらの安定化があれば一級の炭素カチオン種でも発生しうる。

図5. アリルカチオンとベンジルカチオン

この安定化はカチオンが共役によってさまざまな位置に移動することによって感覚的に説明される。例えばベンジルカチオンは下図のように四種類のカチオンになりえることがわかる。


図6. ベンジルカチオンの共鳴構造

このようにカチオンがいろんな状態をとれるとそれぞれの炭素が一つのカチオンを分担するようなイメージで安定化されることになる。
これらのそれぞれの状態を共鳴構造という。

3. ヘテロアトムの電子供与

窒素や酸素などのヘテロアトムは孤立電子対を持ち、隣のカチオンに電子を少し与えるようにして安定化する。
このため窒素の隣に発生したカルボカチオンのイミニウムイオンや酸素の隣に発生したオキソニウムイオンは比較的安定なカルボカチオンとして知られる。


図7. イミニウムイオンとオキソニウムイオンの安定化

これらの安定化効果によってカルボカチオンの安定性が決まり、そのカルボカチオンの発生しやすいかが決まってくる。

当然安定なほど発生しやすく、不安定なほど発生しにくい。

つまり、三級だったり、芳香環や二重結合の隣だったり、酸素や窒素の隣だとSN1反応が起きやすいわけですね。
勇樹 すばらしい!理解が早くてよろしい。
まぁ、でも一級とか三級とか反応機構の違いありますけど、ハロゲン化アルキルじゃ求核置換反応はおきるってことですね。

まぁ反応機構とかが違っても、結果はあんまし変わんないなぁ。

勇樹 はぁ??
えっ? ウチ、今なんか駄目なこと言いました。・・・?
勇樹 ここまで言ってもまだわからんか、、、SN2反応とSN1反応の根本的な違いが、、、

次は「ここが違うよ!SN1とSN2!!」をやるから!!

え、まだあるの、、、(高校の内容関係ないし、もうええんやけど・・・)

次回:女子高生でもわかるSN1・SN2の違い!立体化学や鏡像異性体についてへ続く

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