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大阪大学入試問題ミス:原因と入試の在り方について考える

2018/01/15
 
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いやー入試の季節ですね。

入試ってやってるときはとっても大変だった記憶があるが、終わってみれば大した問題でなかったような、不思議な思い出。でも二度とはごめんだ(^_^;)

ご存知の方も多いと思うが、阪大の物理の出題でミスがあったらしいね。

結構いろいろな問題が絡んだ興味深いニュースなので取り上げてみたい。

 

どういったミスであったか、簡単な経緯

出題ミスがあったのは物理で、音叉に関する出題。
音叉は二つの腕が異なる方向に振動するモード(A)と、二つの腕が同じ方向に振動するモード(B)が存在する。問題文でも振動モードAが一般的であると述べられていたが、指定がないにも関わらずなぜか答えはBを前提とした値が正解となっていたらしい。

しかも「設問ごとにかの前提が異なる」という阪大の説明に対し、後付けで単純なミスなんじゃねーの?という声も挙がっているが。。。

なんにせよ、1月6日に大学は出題ミスを認め、追加で30人を合格することとした。

今の時期ですか、、、一年間近く浪人して勉強頑張った人もいるかもね。。。(-_-;)

 

何度もあった指摘

実はこの出題ミスは今突然分かったことではなく、高校教員や予備校から何度も指摘されていたらしい。これまではその度に「阪大の当初の解答は正しい」と説明してきた。

この事件で一番まずいところやなぁ。

ミスはしょうがないんだよね。受験生には申し訳ないのだが、ミスがあるのはしょうがない部分がある。問題作っているのは人間だから。今までも大学の先生はミスのないように、忙しい中細心の注意を払って問題を作っている。それでもやっぱり、たまにはミスが出ちゃうよね。。。

本当に大事なのはミスが出たときの対応だろう。
今回は外部の指摘を半ば無視したような形で、対応が非常に遅れてしまった。

これはまずい。対応の遅れによって何も悪くない受験生が割を食う形になる。

ミスを認めると大変な騒ぎになるので認めたくなかったのだろうが、対応が遅れたせいでみんな不幸な余計酷い状況になってしまっている。

 

そもそも入試は大学教員が作るものなの?

大学教員の先生からはこんな意見もでている。

先生の他のtweetを併せ、主張を簡単にかいつまむと、
1. 大学教員は高校の学習内容の専門家ではない。よって入試の作問に秀でているかは疑問。
2. 高校教員など高校の学習内容に詳しい人が作問すべき。
3. 実際、海外では大学教員が作問している国なんてない。
4. そもそも大学別で二次試験を用意するのは、研究者の時間を奪うという人的コストに効果が見合ってない。いくつかの難易度を用意した統一テストで十分。

という内容。

1,2については完全に納得するところで、正直大学教員以上に問題作問にふさわしい能力を持った人がいるのではないかと私も思います。

4の大学別二次試験については割と意味あるんじゃないかなぁ、と私は思っています。てか、大儀として意味をもたせないといけないと考えています。ただ研究者の研究時間を奪うのは私も反対なので、「入試作問専門組織を設けて、作問組織が大学教員の意見を汲んだ上で作問」したらええかなぁ、と思ってます。その場合、お金どうすんねんって別の問題出てくるけど(^_^;)

 

今回の事件の原因

今回のミスは大学教員が作問している弊害が顕在化した結果ですよね。

作問能力なら絶対駿台とか河合塾の先生のほうがうまいと思うよ。各大学の模試とか見てても明らかだったと思う(^_^;)。なんせ受験問題の専門家だからねぇ。
一方、大学教員は作問にあたったら高校の教科書を読み直すところからはじめるんだもの、、、

問題を作るというのは作問の専門性を要する難しい仕事。高校の範囲を逸脱してないか?思いもしない別解はないか?などなど注意する点がいくつもある。半ば専門外の大学教員が入試問題を作問してミスするなというのは無茶がある。
(それでもあったら騒がれるほど出題ミスが少ないことはむしろ大学教員の努力と能力の賜物だろう)

そんな無理ゲーを強いられながら大学教員の責任は超重たい。今回も相当たたかれてしまったようだし、責任重いからこそなかなか出題ミスを認められなかった部分もあるだろう。もちろんミスを素早く認めなかったのは非常によろしくないことだが、同じ立場になったら・・・と想像するとミスをなかなか認められない気持ちは想像できる(-_-;)

大学教員が作問してる以上、こういった事件はまた起きると考えるべきだろう。

 

受験の在り方が問われるか

再発を防止するには、作問の専門家が入試問題を作問するべきだろう。
国の機関か、大学内の組織で実現できるかはわからないが、作問のプロフェッショナルが作るべきだよね。てか大学教員が作問してるって嫌じゃない?あんまり高校の学習内容詳しくない人が問題作ってるんだよ?(^_^;)

ミスの対応についても、大学教員は自分の専門外のことやらされた挙句責任取らされるって構造になるからね。今回の対応は非常に悪手だった前提はおいといて、そりゃあできれば認めたくないし、対応も遅れる構造だよなぁ。

この大阪大学の入試ミスは単純な問題でなく、構造的に起こるべくして起こったような気がしてならない。根本的に解決するには「受験問題を用意するにあたって、何を目的に誰がどうやってどのくらいのコストをかけて問題を作るか?」といった入試の在り方から議論される必要があるでしょうねぇ。

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Comment

  1. Y. より:

     私もこのことをブログに書こうかなと思ってましたが、全く同意見です。入試においてゼロリスクを追及すれば本来の教員の仕事に大きな支障がでますし、一方で、ザルのようなAO入試や推薦入試があって、なぜ入試のミスがこれだけ大きく問題視されなければならないのかずっと疑問に感じてました。
     これ以上のブログ記事はとても書けませんので、私が書くのはやめました。

    • moroP より:

      被害者の高校生の人生に影響が大きいですから入試ミス自体は問題視どうしてもされますよね。
      ですから余計大学教員が責任持つほど入試問題制作に関与しないほうがいいと思うのです。(^_^;)

      適切な入試問題作問のスペシャリストが責任をもって作問し、出題ミスについても迅速に対応できるシステムが必要ですよね。

      この記事のこととかお気になさらず、ぜひブログ書いてください~
      いろんな意見あったほうが楽しいですし

      • Y. より:

         前回のコメントで、「私が書くのはやめました」などと、何やら喧嘩を売っているような表現で終わっていて失礼しました。
         早速に前言撤回して書いてみました。試験の外注は、予備校は漏洩等の問題がありそうですし、たとえば、優秀と判断された高等学校の先生が退職された後、名誉職として勤務できるような組織ができたらいいですね。

  2. Y. より:

    前回のコメントで「私が書くのはやめました」と、何やら、喧嘩を吹っ掛けたような終わり方で失礼しました。で、恥ずかしながら前言撤回で書いてみました。外注は、私も賛成ですが、予備校の場合は漏洩のリスクがあります。たとえば、退職された高等学校の優秀とされた先生方に名誉職として作成していただくような形はどうかなと思っています。

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