芳香環のどの位置につくか・・・それが問題だ
勇樹 | 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち |
理香 |
そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。 |
なぜジアゾカップリングはフェノールのOHの反対側にくっつくのか??
勇樹 | 前回、話したようにジアゾカップリングはフェノールのOHの反対側にくっつく。
他にもピクリン酸の合成は以下のような位置で三つのニトロ基が導入されるし、安息香酸エチルのニトロ化は隣の隣にニトロ基が入るね。 |
あ~言われてみれば・・・反応する位置が違いますよね。
全部暗記してました。。。 |
|
勇樹 | まぁ、高校有機化学的には暗記せざるを得ないところ。
ただ、有機化学には一定のルールがあるもんだ。 |
ルール!??イミフなんですけど!? | |
勇樹 | なぜ上の式のような位置でジアゾ基やニトロ基が反応しやすいのか理解することは非常に重要。
今日はそれを押さえよう!! |
一置換ベンゼンの置換位置の名前
一置換ベンゼンの置換位置にはそれぞれ名前がついている。
置換基の隣:o オルト位
置換基の隣の隣:m メタ位
置換基の反対側:p パラ位
図1. 芳香族求電子置換反応の反応位置
ジアゾカップリングはパラ置換。ピクリン酸の合成はオルト・パラ置換ということになる。
また安息香酸エチルのニトロ化についてはメタ置換ということになる。
なぜこんな違いが生まれるのだろう???
なぜ電子供与基と電子求引基で位置選択性が異なる?
芳香族求電子置換反応の位置選択性は芳香環の電子状態によって決まる。
芳香環に電子を与える電子供与基がついていればオルト・パラ置換が起きやすい。
電子供与基のついた一置換ベンゼンについて考えると共鳴構造式を以下のように書くことができる。
図2. 電子供与基の置換した芳香環の共鳴構造
その結果メトキシ基のオルト位とパラ位はδ-性があることになる。
芳香族求電子置換反応はプラスのカチオンが電子を求める反応なので、当然マイナス性の高いところで反応が起きやすい。
だからアルコキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基などの電子供与基がついたベンゼンはオルト・パラ位で置換反応が起きる。
図3. 電子供与基のついた芳香環の芳香族求電子置換反応
へー。電子供与基でオルト位とパラ位が反応しやすくなってるんですね。 | |
勇樹 | そーそー。
実際にフェノールはベンゼンよりも圧倒的に芳香族求電子置換反応の反応速度が圧倒的に速い。 |
逆に電子求引基のついた一置換ベンゼンの共鳴構造式はさっきと逆になる。
電子求引基のオルト位とパラ位はδ+性があることになる。
図4. 電子求引基の置換した芳香環の共鳴構造
カチオンもプラスなので反発してオルト位とパラ位は反応しにくく、エステル基やニトロ基のついた芳香環にはメタ位で置換反応が起こる。
図5. 電子求引基の置換した芳香環の芳香族求電子置換反応
メタ置換ってメタ位が反応しやすいとかじゃなくて、オルトとパラが反応しにくいからメタ位にくっつくんですか!? | |
勇樹 | その通り!!
それは反応速度からも明らかで電子求引基のついたベンゼンは普通のベンゼンより反応性が低い。 メタ位に反応するのは消極的な理由なんだ。 |
この位置選択性の原理を踏まえれば、ジアゾカップリングやピクリン酸の合成はオルト・パラ配向性、安息香酸エチルのニトロ化はメタ配向性であることはわかる。
図6. 芳香族求電子置換反応の位置選択性
なんにでも理由があるもんなんですねぇ~・・・ | |
勇樹 | まぁ実際にはいくらか配向性に反した生成物ができたりもするけど、基本はこれで押さえておけば間違いない。 |
勇樹 | あと覚えておかなければならないのはハロゲン。
ハロゲンは誘起効果で(高い電気陰性度で)芳香環の電子を奪い反応速度自体は遅くなるが、非共有電子対が電子与えるのでオルト・パラ配向性を示す。 |
ややこしいですねぇぇ~! | |
勇樹 | まぁ、これは結構特殊。覚えておこう!! |
それはそうと・・・
でも大分いろいろくっつける反応覚えてきました! ウチだいぶいい感じじゃないですか!? |
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勇樹 | アルドール・・・ |
・・・??・・アルコール?? | |
勇樹 | おいおい・・・
アルドール知らんのに有機化学わかった気になるのはまずいなぁー おまえさん! たたきなおしたる! |
だから知らんって・・・ |
次回へ続く。
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コメント
いつもありがとうございます!アルドール…