Jin Quan Yu 第一回:経歴及び独立前の仕事について

      2018/02/14

1. 経歴及び独立前の仕事

JQY : 今一番ヤバイ化学者

有機化学者に「有機化学で今一番ヤバイ化学者はだれか?」と問いかけるとかなりの得票数を得るであろうJin Quan Yu先生。パラジウム触媒を用いて、ありえない位置の炭素-水素結合変換を報告し続ける。

JACSは当たり前でNature, Scienceも少なくない。

MacMillan先生と全く異なる系統のテイストでトップジャーナルを連発し続ける。MacMillan先生の仕事は見たときに「さすがっす~」と思わずありがたがってしまうような神々しさがあるが、Yu先生の仕事は論文を読んだとき「まじかよ・・・」と絶句してしまうようなクレイジーさがある。

Yu先生の最近の論文はだいたい目を通しているが、完全でもないし10年以上前の仕事はあまりフォローできていない。この機会に勉強がてらYu先生の研究を研究してみようと思う!!

経歴

1982 – 1987: East China Normal University B.Sc. in Chemistry, Top 5% of national examination for admission to SIOC. すごぉ、やっぱ勉強もできるんやなぁ(^O^)
1987 – 1988: Shanghai Institute of Organic Chemistry Coursework for M.Sc. degree
1988 – 1990: Guangzhou Institute of Chemistry  M.Sc. in Chemistry with S.D. Xiao
1994 – 1999: University of Cambridge Ph.D. in Chemistry with Jonathan Spencer
1999 – 2003: University of Cambridge Junior Research Fellow (JRF) of St. John’s College
2001 – 2002: Harvard University Postdoctoral Fellow, supervisor: E.J. Corey
2003 – 2004: University of Cambridge Royal Society Research Fellow, 2003 – 2004
2004 – 2007: Brandeis University Assistant Professor of Chemistry
2007 – 2010: Scripps Research Institute Associate Professor of Chemistry
2010 –         : Scripps Research Institute Professor of Chemistry

簡単にまとめると、中国で修士→博士をケンブリッジのSpencer研→ポスドクをCorey研→独立

という流れ。やはり当然かもしれないが超エリートですね。。。

独立前に27報の論文を報告している。すごいね。。。(^_^;)今回はパラジウムの仕事の独立前の仕事についてみてみよう。

 

急に始まるパラジウム触媒の化学

Yu先生は1997年いきなりJACSにパラジウム触媒のメカニズムについての論文を報告する(参考文献1)。この論文の背景がいまいちつかめなかった。Spencer先生の研究の背景にも合致しない。
金属ヒドリド種による重水素の交換から反応メカニズムを調べる研究が当時流行っていた時代らしいので、論文読んで思いついたのかもね。。。すげぇ・・・(^_^;)

cis-アルケンに重水素をPdまたはRh触媒存在下作用させると金属ヒドリド種やオレフィンの分極によって異性化後のトランス体に重水素の導入位置が異なることが分かった。


図1. 金属ヒドリド種によるcisオレフィンの異性化:基質の分極が重要

この結果から
・PdーHの水素はヒドリド的にもプロトン的にも反応が進行すること
・Rhはヒドリド的に反応しやすい事
・基質のオレフィンの分極が金属ヒドリド種の付加の仕方に大きく影響する事

がわかり、オレフィンの水素還元の反応機構における金属ヒドリド種の付加についての重要な知見が得られた。

同年に不均一触媒にPd/CにおいてもPd-Hはヒドリド的にもプロトン的にもオレフィンへ付加反応が進行することを報告している(参考文献2)。
さらに1998年には不均一触媒Pd/Cに対する配位子の影響を議論しており、配位子によってパラジウムヒドリド錯体のヒドリド性が上がることを見出している(参考文献3)。


図2. 配位子でパラジウムのヒドリド性が変化する

ちなみにイノシトールの合成研究とかしつつ(参考文献4)、こういったパラジウムの化学を報告している。

恐るべきパブリケーションペースだね。(^_^;)

 

やはり優れた研究者は優れた研究者を呼ぶ。

1998年にベンジルタイプの保護基を開発する。ナフチルメチル基という官能基で平面性がベンジル基よりも高いため水添反応ではずれやすいというもの。(参考文献5)


図3. 2-ナフチルメチル保護基(NAP)

井上将行先生の講演でこの保護基の優秀さを聞いたことあったけど、これYu先生の仕事だったんだね、、、知らんかった!

この論文のさらに注目すべきは筆頭著者Matthew J. Gaunt・・・だと?

そっかぁ~MacMillan先生のキャリア初期にYoon先生やDong先生がいたようにYu先生の下にGaunt先生がいたんですか。んー化学界は狭いというか、一流は一流とで出会うもんなんだね。

こういったパラジウム触媒のケミストリーをGaunt先生とともに推し進め、2002年にはオレフィンの異性化反応を報告している。(参考文献6)

そしてCorey研にうつり、やはりパラジウム触媒で反応開発している。2003年にα,β不飽和ケトンにパラジウム触媒とtBuOOHを作用させ不飽和ジケトンに変換するという反応を報告している(参考文献7)。


図4. αβ不飽和ケトンの酸化反応

めっちゃいい反応ですね!!(^O^)

Corey研ではさらにこの反応のバリエーションとしてシリルエーテルの酸化を報告している(参考文献8)。


図5. シリルエノールエーテルの酸化反応(参考文献8より引用)

これらの報告はパラジウム触媒によるC-H変換という現在のYu先生の研究に続く重要な論文といえる。

 

Jin Quan Yu 第一回:経歴及び独立前の仕事についてのまとめ

驚異のパブリケーションペースで独立前から論文を出しまくるJin Quan Yu先生。これでも大分はぶいて独立前の仕事を紹介している。

縦の進歩と横の進歩いずれもするどい。

パラジウム触媒の機構的知見が得られたと思ったら、それを不均一系や配位子効果にすぐに展開している。さらにいつまでも同じことをやるのでなく、保護基開発を経て反応開発へ路線をシフトしている。

そして気が付けばポスドクのCorey研でC-H官能基化の開発をしている。

MacMillan先生と比較すると不連続な進歩が度々ある感じがするね。
なかなかまねできないところだ。

相当頭のいい先生なんだろうねぇ。

あと実験量がやばそうなのは伝わってくるよね。独立前にこの内容の論文をこのペースで出すのは異常すぎる。

今も通じるんだけど本当に有機化学好きなんだろうな、と思う。普通こんなにできないよ。(^_^;)

一回講演を拝聴したことあるけど、めちゃくちゃしゃべりまくるんだよね、Yu先生。

1聞いたら100返ってくるので、講演時間がものすごく延長になってたのを覚えている。
それでも止まらないんだよね、Yu先生は。笑
語りっぷりは完全に純粋な子供のよう。本当に有機化学好きなんだよなぁ。
「こういう先生ならあのアクティビティーも納得だわ」と学生の時思った(^_^;)。

 

類まれな頭脳と超人的バイタリティーをすでに感じさせるYu先生の独立前の仕事。

すでにすごいが、独立後はますます加速していく!

いざ、C-H Functionalization!

 

参考文献
(1) J. Am. Chem. Soc. 1997119, 5257.  
(2) J. Org. Chem. 199762, 8618.
(3) Chem. Commun. 19981103.
(4) J. Org. Chem. 199661, 3234.
(5) J. Org. Chem. 199863, 4172.
(6) J. Org. Chem. 200267, 4627.
(7) J. Am. Chem. Soc. 2003125, 3232.
(8) Org. Lett. 20057, 1415.

 

 

sponsored link

 - 研究者の研究

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。