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女子高生と学ぶ求核置換反応!ウィリアムソン合成とハロゲンの脱離基

2021/11/18
 
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SN2反応をウィリアムソン合成で学ぼう

勇樹 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち

理香

そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。

 ハロゲン化アルキルの変換法:求核置換反応今回はSN2反応

勇樹 今日は炭素と炭素をくっつける反応から少しだけ離れて、求核置換反応の1つSN2反応について考えよう。
とは言っても分子を組み立てる方法でもあるから大丈夫。
きゅうかく?・・・ちかん・・・?
勇樹 核ってのはプラス成分って意味。だから求核置換反応は「プラス成分を求めて(マイナス成分が)入れ代わる反応」って意味。
イミフ!!どんな反応??
勇樹 よっしゃ、求核置換反応はSN1とSN2が代表的だけど今日はSN2を説明しよう。

 

求核置換反応:SN2反応

SN2反応は求核置換反応の一種で、脱離基が外れると同時に求核剤(マイナス成分)が攻撃する機構の反応のことをいう。
ハロゲン化アルキルと求核剤の反応を書くと、下図のようにビリヤードのような反応機構だ。
求核剤が脱離基の裏から近づいて、脱離基のハロゲンを押し出すように反応が起きる。


図1. SN2反応の概略図

このイメージは非常に重要で、一級ハロゲン化アルキルがSN2反応を起こしやすく、逆に三級ハロゲン化アルキルではSN2反応が起きにくい理由になっている。
一級ハロゲン化アルキルはハロゲンの裏ががら空きで反応しやすいが、三級ハロゲン化アルキルは周りの炭素が邪魔で、求核剤(マイナス成分)が反応するべき炭素に近づくことができない。


図2. SN2反応はすいているほど反応がスムーズ

SN2反応によってハロゲン化アルキルのハロゲンを様々なものに入れ替えて分子を組み立てることができる。

へぇー!例えば何がはいるの??
勇樹 アルコールとかアミンとかチオールとか、この前教えたグリニャール試薬も入るね。
有名なのはアルコールを入れるウィリアムソンのエーテル合成かな。

 

ウィリアムソンのエーテル合成

ウィリアムソンのエーテル合成はハロゲン化アルキルとアルコキサイドからエーテルを作る手法。
基本的かつ有用で医薬などの合成にも広く応用されている。

例として臭化ベンジルとナトリウムエトキサイドの反応を考えよう。
まず臭化ベンジルを見てほしい。
前回のように電気陰性度を考えると臭化ベンジルの炭素はδ+に、ナトリウムエトキサイドの酸素はδ-(ナトリウムをはじめとしたアルカリ金属は電気陰性度が極めて小さいので実質的に酸素は-と考えて良い。)
有機反応はプラスとマイナスがくっつくのが基本。
臭化ベンジルの臭素の裏からアルコキサイドが近づいてくっつくと同時に、臭素が脱離する。


図3. ウィリアムソンのエーテル合成

次はウィリアムソンのエーテル合成の応用例。薬の一種のPromestrieneの合成を見てみよう。

最初にフェノキサイドと臭化プロパンがSN2反応、そして次に水酸基をNaH(強力な塩基)でアルコキサイドにしてヨウ化メチルとSN2反応!


図4. Promestrieneの合成

ウィリアムソンのエーテル合成を連続して行って、ガシガシ分子を組み立てている!!

 

脱離基の反応性は?

勇樹 ちなみに下のヨウ化ベンジル、臭化ベンジル、塩化ベンジル、フッ化ベンジルのどれが一番炭素プラス成分としてどれが反応性高いと思う??
んー・・・電気陰性度高くてδ+性が高いフッ化ベンジル??
勇樹 考え方は悪くないけど残念。正解はヨウ化ベンジルなんだ。
これは覚えておかないといけないんだけど、炭素との結合の強さが弱いヨウ素のほうが脱離しやすくて反応性が高いんだ。逆に炭素ーフッ素結合は強固で脱離しにくく反応性が低い。
炭素-ヨウ素は結合が弱いの??
勇樹 うむ、でかいからポロリしやすいというイメージを持っておこう。
反応性高い順に並べると、I > Br > Cl > F となる。

 

今回のまとめ

・求核置換反応はハロゲン化アルキルというプラス成分がマイナス成分である求核剤とくっつく反応。
・SN2反応は脱離基が外れると同時に求核剤が攻撃する機構の反応のことをいう。ハロゲン化アルキルのハロゲンをいろんなものに変えて分子を組み立てることができる。
・ウィリアムソンのエーテル合成はSN2反応の代表例。非常に大事。
・脱離基は大きいハロゲンほど脱離能が高く、ヨウ化アルキルの反応性が高い。

結構ややこしいですねぇ~・・・
勇樹 まぁ、有機化学は単純じゃないよ!

でも求核置換反応はまだ全然終わってないから!

SN1反応語らず何が求核置換反応か!!

知らんがな・・・

次回:女子高生と学ぶSN1反応!カルボカチオンの安定性に寄与する超共役・共役・共鳴へ続く

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