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女子高生と学ぶグリニャール試薬&カルボニルへの求核付加反応!

2021/11/18
 
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電気陰性度とグリニャール試薬のお話

勇樹 博士課程二年で専門は有機化学。金がなくて家庭教師を始めた。話は脱線しがち

理香

そこそこの進学校に通う女子高校生二年。受験も遠く意識低め。勇樹の授業はできるだけさぼろうと話をそらす。

炭素と炭素をくっつけるノーベル賞反応

勇樹 前回で高校有機化学がつまらない理由は炭素と炭素をくっつける方法をカットした結果、有機化学のモノ作り要素がイマイチわからなくなっているからと説明した。
確かに有機化学は加水分解とか酸化とか使ったパズルくらいに思ってました!
 勇樹 何度も言うように炭素と炭素をくっつける反応はちょー大事!!
今日はその中でもかなり重要度の高いグリニャール試薬を説明する。
どれくらい大事かと言うと開発者のグリニャールさんはこの業績でノーベル賞をとった。
ノーベル賞!?やば~!
(あ、でも今度の定期試験にはでないだろーなー、、、高校の内容と関係ないし。まーいいかぁ聞いてるだけでサボれるし)
 勇樹 電気陰性度は覚えてる!?
えっ!?電気陰性度関係あるの!?

 

 

電気陰性度

電気陰性度は簡単にいうとそれぞれの原子が電子を引っ張る強さ。

電気陰性度は周期表の右上ほど強い。(ただし一番右列の希ガスはのぞく!)

図1

その理由については以下のようなものだ。

・右のほうが強い理由:最外殻電子を引きつける陽子の数が強い。

図2. 右のほうが電気陰性度強い理由

・周期表の上の方が原子サイズが小さく、電子が陽子に近くてより強く電子を引き付ける。

図3. 上のほうが電気陰性度強い理由

今回はとりあえず
 Mg < H < C < O
の電気陰性度の関係を押さえておこう。炭素が真ん中にいる事が非常に大事。

電気陰性度によって結合の電子が微妙に偏る。
例えばC-H結合では炭素のほうが水素より電子を引っ張る力が強いので、電子が炭素に少し寄る。その結果、炭素がちょっとマイナスになる。
逆にC-O結合では酸素のほうが炭素より電子を引っ張る力が強いので、電子が酸素に少し寄る。その結果、炭素はちょっとプラスになる。

このプラスマイナスはちょっとの電子の偏りを表すのでδ+とかδ-とかいう風に表記する。


図4. 電気陰性度に由来する電子の偏り。

あらゆる有機反応で電気陰性度は重要なのでよく押さえておこう。

 

??イミフ!反応と電気陰性度とか関係あんの!?
 勇樹 あります。関係おおあり。
なぜなら有機反応がほとんどの場合、電子的にプラス成分と電子的にマイナス成分がくっつくようになっているからだ。

炭素と炭素をくっつける反応の代表選手グリニャール試薬のカルボニルに対する求核付加がわかりやすい。
ぐりにゃーる?きゅうかくふか??

 

 

グリニャール試薬のカルボニルに対する求核付加反応

まず今日はブチルグリニャール試薬のベンゾフェノンに対する求核付加について考えよう。

図5. ブチルグリニャールのベンゾフェノンへの求核付加

勇樹 ベンゾフェノンの真ん中にCO二重結合があるが、これをカルボニルという。
電気陰性度を使って、カルボニルの電子状態を考えるとどうなるだろう??
酸素は炭素より電子を引っ張るから、、、こう?
勇樹 その通り!
つまりカルボニルの炭素はδ+で実際にマイナス的な化合物と反応する。このような性質を持つ化合物をここでは炭素プラス成分と呼ぼう。
 一方、ブチルグリニャール試薬を見て欲しい。マグネシウムについている炭素の電子状態は??
マグネシウムより炭素の方が電子を引っ張るから、、、δ-!!
勇樹 その通り!!特に炭素マグネシウム結合は炭素水素結合よりも相当電子が炭素に寄っていると考えていいので、グリニャール試薬はカルボニルの炭素と逆で炭素マイナス成分(炭素アニオン)と考えて良い!

 

炭素プラス成分と炭素マイナス成分がくっつく。なので、グリニャール試薬の炭素はカルボニル炭素と反応してくっつく。
(本当は軌道で説明した方がより正確ではあるが、ここでは簡単のため分極のみで説明している。)


図6. 反応の電子の動き

*赤い曲がった矢印は電子の流れを表す。

グリニャール試薬は炭素マイナス成分の中でもすごい便利な試薬で、色んな炭素プラス成分と反応させる事ができる。
炭素と炭素を繋ぐ強力な方法。応用範囲の広さといいノーベル賞も頷ける。

おお~反応後すっごく分子が大っきくなってる~!!
勇樹 そう!これが炭素と炭素くっつける反応のすごいところ!!モノ作ってる感じがあるでしょ?
まぁ確かに~ちょっとすごいかも。。。
あと思ってたより、炭素と炭素がくっつくのにちゃんと理由があるんだ~
プラスとマイナスがくっつくんだ。
反応とか一つ一つ丸暗記だと思ってた!
勇樹 有機反応は丸暗記ではなくて一定のルールがある。これが有機化学の面白いところよ!
勇樹 でも、やっぱりこれ以上教えるなら共鳴、共役、酸性度とか説明したいし、SN1、SN2反応押さえんとな、、、
え、、、?テスト範囲の授業は、、、?

次回に続く

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